イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

おふくろの味の底ぢから(1)

管理栄養士・野菜ソムリエ 篠原絵里佳

ほうれん草の胡麻和え

 ほうれん草の美味しい季節になりました。寒さ厳しいこの時期は、甘さがグッと増します。すり鉢で擦った風味豊かな胡麻に砂糖としょう油を加えて作る胡麻和えは、ほんのりとした甘さとほうれん草特有の香りに、心安らぐ一品です。
 ほうれん草の胡麻和えは、体が温まる、寒い冬にもってこいの料理なのです。ほうれん草にたっぷりと含まれている鉄や葉酸は、血液の赤血球を作ってくれる栄養素。これが全身に酸素を運び、酸素が運ばれることでエネルギーが発生して体が温まります。胡麻に豊富なビタミンEは血行を促進する働きがあり、体を冷えから守ってくれます。
 ほうれん草と胡麻の組み合わせは、風邪の予防や乾燥肌にも嬉しい効果が期待できます。ほうれん草のカロテンには、目や鼻、喉の粘膜を潤して強化する作用があります。粘膜が強化されることで、風邪やインフルエンザなどの感染症を予防し、免疫力を高めます。皮膚の粘膜も潤してくれますので、乾燥肌でお悩みの方にもお勧めです。カロテンは、胡麻のように油脂の多いものと組み合わせることで吸収力がアップします。免疫力を高めるビタミンCも豊富に含まれており、冬場のビタミン源としても期待できます。ほうれん草の胡麻和えは、体を気遣う”おふくろの愛情“を感じる一品なのです。
(2016年1月号掲載)

あさりの味噌汁

 春は、あさりが旬を迎える季節です。気候や環境の変化の大きい時季ですが、春の訪れとともに、あさりの深いうま味が心を和ませてくれます。酒蒸し、炊き込みご飯、しぐれ煮など、食卓を賑わすあさり料理は数ありますが、なかでも、あさりの味噌汁はホッと安らぐ一品です。
 あさりを加熱したときに出る汁には、うま味や栄養素がたっぷり含まれていますので、煮汁を一緒にいただけるお味噌汁は、美味しさはもちろんのこと栄養面でも優れています。タンパク質、鉄、ビタミンB2、B12、タウリンが豊富に含まれていることから、貧血予防に効果的です。鉄は不足しがちな上に、汗とともに流れてしまうという性質もあり、発汗量が増える季節を前にしっかりと補いたい成分です。
 春は気候の変化が大きいことからも肌荒れを起こしやすいですが、あさりには傷の修復を助ける亜鉛が豊富です。味噌汁のイソフラボンとともに、美肌効果が期待されます。また、血中コレステロールを減少させるあさりのタウリンと、大豆のリノール酸と過酸化脂質の増加を防ぐサポニンやビタミンEを含む味噌の恵みを一緒にいただけるあさりの味噌汁は、健康を支えてくれる一品です。
 あさりのうま味たっぷりの出汁と、まろやかな味噌の風味で、体にも心にも栄養を注ぎましょう。
(2016年3月号掲載)

肉じゃが

 新じゃがいもの美味しい季節です。新じゃがいもは皮が薄く水分が多いため、皮ごと煮物や揚げ物にすると美味しくいただけます。新じゃがいもで肉じゃがを作れば、その歯ごたえある食感も楽しめます。春になると「皮の周りの豊富なビタミンも摂ることができるのよ」と言いながら、新じゃがいもで肉じゃがを作ってくれた母の姿を思い出します。
 肉じゃがに使う肉は、関東地方では豚肉、関西地方では牛肉が多いようですが、どちらもじゃがいもとの相性は良いものです。じゃがいもの主成分の炭水化物には、豚肉に豊富なビタミンB1と一緒に摂ることで素早くエネルギーに変わり、疲労を回復してくれる効果があります。
 じゃがいもにはビタミンCも豊富です。通常は熱に弱いビタミンCですが、じゃがいものビタミンCはでんぷんに包まれているため熱に強い特長があります。ビタミンCには牛肉に豊富な鉄の吸収を高めてくれる働きがあり、貧血を予防する効果が期待できます。
 肉じゃがに彩りを添えてくれる人参には、皮膚や粘膜を健康に保つカロテンが豊富です。肉の脂質と一緒に摂ることで吸収率も高まり、免疫力が高まります。玉ねぎを炒めるときは、中火でゆっくり丁寧に炒めると、甘みがグッと増します。じゃがいもの甘みと玉ねぎの甘み、そしておふくろの愛情という名の隠し味に、ほっと癒される一品です。
(2016年5月号掲載)

イワシの梅煮

 疲れているときや食欲がない日の夕暮れどきには、決まって台所から甘辛い煮付けの香りが漂ってきたものです。「一口でもいいから食べてみてね」と言いながら、梅干しと一緒に丁寧にイワシを煮付ける母の姿を思い出します。言われた通りにイワシの梅煮を一口食べれば、梅干しの酸味が口に広がり、食欲もグンと増してご飯が進んだものです。
 梅干しの酸味成分のクエン酸は、唾液の分泌を促して食欲を増進させたり、胃液などの消化酵素の分泌を高めて消化吸収を助けてくれます。そのうえ疲労回復効果もあるため、疲れていたり食が進まないときにお勧めの食材です。イワシは良質なタンパク質が豊富なので肉体疲労の回復にも役立ちます。甘辛く煮ているためにご飯との相性もよく、エネルギー源である炭水化物を摂ることもできるのです。
 イワシは脂質も豊富な魚ですが、炭水化物や脂質、タンパク質の利用を高めるビタミンB2も豊富に含まれていますので、ダイエット中でも安心していただけます。イワシの脂質はEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という良質な油で、血栓の予防や血中の中性脂肪を減らす役割もあり、生活習慣病予防にも役立ちます。
 食欲がないときだからこそしっかりと食べてほしい、そんな温かい思いが詰まったイワシの梅煮。おふくろの愛と底ぢからを感じる一品です。
(2016年7月号掲載)

栗ご飯

 夏の暑さで疲れた体を思いやる、母の想いが詰まった栗ご飯。「ご飯を食べると力が出るわよ」と体を気遣う言葉とともに、秋になると決まって食卓にのぼるおふくろの味でした。ほっくりとした食感とほんのり甘い栗を新米と一緒に炊けば、お互いの美味しさが惹き立ちます。もちろん美味しいだけではなく、栄養面でも相性抜群の組み合わせです。
 脳や体のエネルギー源となり、スタミナの源になる炭水化物が豊富なお米。栗には炭水化物を体内で利用するときに必要なビタミンB1が豊富なので、一緒にいただけば疲労回復効果が期待できます。また、栗に豊富な食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにしてくれますし、お米にはほとんど含まれていないビタミンCもたっぷりと含まれています。通常は熱に弱いビタミンCですが、栗のビタミンCは熱に強い性質があるので、お米と一緒に炊いても安心です。ビタミンCは、老化や生活習慣病の一因となる活性酸素を除去する抗酸化作用に優れているほか、ストレスと闘う作用も期待されている健康維持に役立つ栄養素です。また、栗には高血圧の一因となる余分なナトリウムを排泄して、高血圧を予防する効果が期待されるカリウムも豊富に含まれており、お米に不足している成分を補ってくれる心強い相棒なのです。
 ほっこり甘い栗ごはんは、心も体も癒やされるおふくろの味です。
(2016年9月号掲載)

豚汁

 寒い冬を迎えると、決まって食卓に上る豚汁。冷えた体を温めてくれる豚汁は、不思議と心まで温めてくれる一品です。
 体を温めてくれる理由は、豚汁に使われている食材にあります。ごぼう、人参、大根などの根菜類、里芋や葱にはエネルギー源となる糖質が含まれている上に、糖質の代謝を高めるビタミンB1が豊富な豚肉が使われているので体を温める働きがあるのです。食物繊維も豊富なため、しっかりと噛んで食べることから、血流が良くなることでも体が温まります。
 七味唐辛子を加えれば、さらに体が温まります。また、食物繊維と一緒に、味噌や葱、ごぼうに含まれるオリゴ糖も摂れるので、腸内環境も整い、免疫力が高まり、風邪の予防にも一役買ってくれます。
 豚肉のコクといろいろな野菜の香りや出汁(だし) とともに、味噌の風味が特徴の豚汁。豚汁の味の決め手にもなる味噌は、「医者いらず」という言い伝えがあるほど、さまざまな健康効果が期待されており、がんや生活習慣病の予防や老化予防の効果が期待されています。具だくさんの豚汁は満腹感も得られ、食べ過ぎの予防にも効果的です。
 豚汁は、冷えた体を思いやり、寒さを元気に乗り越えてほしいと願うおふくろの温かい想いが心に沁みる冬の逸品です。
(2016年11月号掲載)

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