イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

夜空を眺めてみませんか(1)

国立天文台 主任研究技師 宮内良子

冬の星空の三角形

 早いもので、今年も残り少なくなりました。日暮れも早く、冬至(とうじ)も近くなり寒さが増してくる分、夜空がいちだんと冴(さ)え渡ってきます。寒さ対策をして、夜空を眺めてみませんか。
 夜半に南の空を見ると、3つの星が1列に並んでいます。それを囲んで、上に2つ、下にも2つの明るい星が光っているのが目に入ります。このあたりがオリオン座です。
 3ツ星の向かって左上にある1等星はベテルギウス、右下にある1等星はリゲルです。この2つの星をよく見ると色が違っているのがわかります。ベテルギウスは赤っぽく、リゲルは青白いのです。これは、それぞれの星の温度と大きさが異なっているからです。
 オリオン座の左下の方に、全天一の明るさを誇るシリウスが輝いています。シリウスはおおいぬ座の星です。ベテルギウスーシリウス間の距離と同じ距離をベテルギウスの左方向に伸ばしていくと、明るい星があります。こいぬ座のプロキオンです。おおいぬ、こいぬは狩人オリオンが連れている2匹の犬です。このベテルギウス、プロキオン、シリウスの作る三角形が、「冬の大三角形」になります。
 このように、全天には88の星座があり、季節ごとに見える星座が変わってきます。
(2009年12月号掲載)

春の星空の曲線と三角形

 なんとはなく霞(かすみ)がかかったような春の空は、冬の星空の輝きとは違ってやわらかい印象を受けます。花冷えの対策をして、夜空を眺めてみましょう。
 春の夜空の代表は、おおぐま座の中のひしゃくの形をした北斗七星です。この星ぼしは、北東の空を見上げると柄を下にして立ち上がっているように見えます。北天の7個の星がひしゃくの形に並んでいるので、この名がつきました。
 ひしゃくの柄の部分のカーブをそのまま南に延ばすと、うしかい座のアルクトウルスに当たります。オレンジ色をした明るい星です。アルクトウルスは「クマの番人」という意味で、いつもおおぐま座の後についてまわっているので、このような名がつけられました。さらにそのまま南へカーブを延ばしていくと、白色に輝く明るい星・スピカに当たります。おとめ座を形作る星の中で一番明るい星です。この3つの星をなぞってみるとゆったりとしたカーブになります。これが、「春の大曲線」です。
 また、アルクトウルスとスピカを結ぶ線をアルクトウルスを支点に左回り(北斗七星の方向)に回転すると、獅子(しし)座のしっぽにあるデネボラが見つかります。このアルクトウ ルス・スピカ・デネボラを頂点にして結ばれる三角形のことを「春の大三角形」と呼んでいます。
(2010年4月号掲載)

夏の星空の三角形

 夏は七夕など、何かと星を眺める機会が多いでしょう。夏の夜空をあでやかにするのが、天の川です。都会では明るくて淡い天の川の光は見えないのですが、空気の澄んだ暗い夜空であれば、織姫と彦星を分け隔てる天の川を見ることができます。雲と見間違うばかりに夜空に流れていますが、これは無数の星が集まったものです。
 この天の川の中腹に、こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブという3つの輝く星があります。
 明るく青白い光を放っているベガは、別名七夕でいう織女(しょくじょ)星(織姫)、次に明るい星がアルタイル、七夕でいう牽牛(けんぎゅう)星(彦星)に当たります。
 3つの中で一番暗いデネブは、織姫を1年に一度、彦星のもとへ渡してくれるかささぎ(はくちょう)の尾に当たる星です。
 ベガ、 アルタイル、デネブの3つの1等星を結ぶと大きな二等辺三角形ができます。これを「夏の大三角形」と呼んでいます。冬や春の大三角形が正三角形に近いのに対し、夏は二等辺三角形になっています。この底辺のベガとデネブを固定して頂点のアルタイルをひっくり返すと、新しい三角形の頂点にちょうど北極星が来るでしょう。北の方向を探す1つの方法です。
 夏の夜空は、まだまだにぎやかに星々が輝いています。
(2010年7月号掲載)

秋の星空の四辺形

 天高く馬肥ゆる秋は空が青く澄み渡り、夜空の星々も輝きを一段と増し、星空を眺めるのに大変良い季節です。
 冬、春、夏の夜空には三角形がありました。秋は三角形ではなく四辺形です。南を向いて立ち、ちょうど頭の上あたりを見上げてください。4つの星が大きな四辺形を形作っています。これが、秋の星空を代表する「ペガススの四辺形」と呼ばれるものです。
 これの4つの星のうち、西側の二等星を結んで北にその間隔の5倍ほど延ばしていくと北極星が見つかり、また、南に3倍ほど延ばすと、みなみのうお座の1等星・フォーマルハウトが明るく光っています。この星は秋の星座の中で唯一の1等星です。そして、四辺形の東側の2つの星のうち、北側の2等星は、お隣のアンドロメダ座の星です。
 この星を含めて3つほどの星がほとんど1文字に延びていますが、このあたりがアンドロメダ座です。2つ目の星から北西にたどっていくと、ボーッとかすかに青白く光っているのが見えるでしょう。これが約220万光年(光の速さで220万年かかる)のかなたにあるアンドロメダ大星雲(M31)です。この星雲は双眼鏡で見ると多くの星の集まりで、長円形をした中心部が周囲より明るいこともわかるでしょう。この四辺形は、まだまだある秋の星座を見つけるための重要なポイントです。
(2010年10月号掲載)

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