- 日替わりコラム
Thu
1/6
2022
最近知ったヤマトシロアリの「まるでマジックのような生態」に新鮮な驚きを覚えましたので、ご紹介します。
特筆すべきは、その寿命の長さです。昆虫の平均寿命は2~3か月程度だと思いますが、ヤマトシロアリは、働きアリで5年、兵アリで10年、巣を創設した王アリであれば50年に達すると算定されています。おそらくこれは、日本産昆虫としては最長でしょう。
では女王アリはどうでしょうか。創設女王はそれなりに長生きで、王の半分くらいの寿命だといわれています。これでもかなりの長寿ですが、それよりも驚くべきは彼女の分身の術です。創設女王は単為生殖という方法で、生きている間にせっせと自分と同じ遺伝子を持つ娘(自分の分身)を量産し、王アリより先に死んでいきます。王アリは単為生殖はできないので、長生きするしかありません。創設女王アリの分身の術と、創設王アリの長寿が相まって、巣内の近親交配と、その帰結としての近交弱勢の出現を防いでいるのです。
ヤマトシロアリにおけるこのユニークな繁殖システムが、京都大学の松浦健二博士によって発見されて以来、世界のほかのシロアリでも同じ現象が見つかっており、これがシロアリの繁殖法の主流と認められる日が来るかもしれません。
参考文献:『シロアリ』松浦健二著 岩波科学ライブラリー
稲岡徹
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