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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

大人の食物アレルギー

東京食品技術研究所 学術顧問 鈴木達夫

年々増加する成人の食物アレルギー

 私は数年前から、顔や首が赤みを帯びたり、湿疹に悩まされています。医師から勧められて、アレルギー検査(血液検査)をしたところ、ハウスダスト、ダニやヒノキだけではなく、小麦アレルギーがあると診断されて大変驚きました。いろいろ調べてみると、小児だけではなく大人のアレルギーも年々増加しています。将来、日本人の10人に1人が食物アレルギーを持つと推計する専門家もいます。
 大人の食物アレルギーの原因物質としては、果実・野菜、小麦、甲殻類、スパイス、ナッツ類の順で頻度が高いとの報告があります。小児のアレルギー物質は、0歳では鶏卵、牛乳、小麦で9割を占めますが、年齢が上がるに伴い、魚卵、果物、甲殻類が上位を占めるようになります。
 小麦アレルギーを疑われて小麦を避けようとすると、うどんやラーメンなどのめん類はもちろんのこと、パンやクッキー、フライや天ぷら、さらにカレーなど多くの料理に小麦が多用されていることがわかります。小麦を除去しようとすると、朝食もパンからごはんに変えたり、昼食も手軽なめん類は食べられず、夕食では一人だけ家族とは別のメニューにしたりと、大きく食生活を変えていく必要があります。
 食物アレルギーは、一歩間違えると生死にかかわります。本年は、読者の皆さんと大人の食物アレルギーについて考えていきます。
(2021年1月号掲載)

アニサキス

 アニサキス食中毒は、寄生虫(線虫)の1種であるアニサキスの幼虫が寄生しているサバ、アジ、サンマなどの生鮮魚介類を介して胃壁などに刺入(しにゅう)して起こる、激烈な痛みを伴う食中毒です。治療は、内視鏡により虫体を取り出します。令和元年には全国で食中毒事件数328件、患者数336人が報告されていますが、事件数としては、生肉などによるカンピロバクター、冬場のノロウイルスを抜き第1位となっています。届出がされない症例も多く、診療報酬のデータから年間7000人程度の患者がいると推計する研究者もいます。
 ところで、アニサキスはアレルギー反応の原因(アレルゲン)となることが知られています。アニサキスによるアレルギー反応の症例は少ないとはいえ、急激な血圧低下や呼吸不全などの重篤なアナフィラキシーショックを起こすこともあります。一度アナフィラキシーショックを起こした人がアニサキスが寄生している魚介類を食べると、再び発症する可能性が非常に高くなります。また、死んだアニサキスやアニサキスの分泌物によってもアレルギー反応が起こることが知られ、魚介類を原料とした出汁やエキス、ソースなどにも注意が必要です。このため、アニサキスアレルギーの人は、少量でも魚介類を食べることを避け、エピペン(自己注射)を常時携帯するなど、非常時に備えています。
(2021年3月号掲載)

外食での情報活用

 東京・日比谷にある老舗ホテルに、バイキング形式の発祥となったレストランがあります。このレストランを利用して成人式のお祝いをしたのですが、主賓がナッツ・アレルギーでした。
 席に着くと食物アレルギーの有無を尋ねられ、ナッツにアレルギーがあることを知らせると、「落花生アレルギーはありますか」と質問されました。「ない」と伝えたところ、バイキング料理数十種類の食材について書かれた数ページにわたる食材一覧表の中の「ナッツ」の部分にマーカーをしながら詳しく説明していただきました。おかげでアレルギーも出ず、美味しい食事で楽しく成人式をお祝いすることができました。
 食品表示法により、加工食品などには食物アレルギーについての表示義務が課せられています。消費者は、スーパーなどでの買いものではアレルギー物質や栄養成分など多くの情報を得られるようになりました。その一方で、食物アレルギーがあると、外食のハードルは高くなります。ファミリーレストラン各社のホームページには、すべてのメニューのアレルギー表示や栄養成分の一覧が掲載されています。使用されている調味料なども含めると、アレルギー物質の有無を調べるには大変な労力が必要ですが、自分や家族を守るためにもこれらの情報をしっかりと活用したいですね。
(2021年5月号掲載)

食品表示

 コンビニエンスストアやスーパー、デパートで食品を購入する際に、食品表示を見ていますか。箱やポリ袋、ペットボトル、ビン・缶などの容器に包装された加工食品には、消費期限や賞味期限をはじめ、製造者の住所・氏名、保存方法、カロリーや塩分などの栄養成分、さらにはアレルギー物質(アレルゲン)などの情報を表示することが食品表示法によって定められています。なお、対面販売や量り売りなど客の求めに応じて販売される食品、レストランや飲食店で提供される食事については表示の義務はありませんが、最近の健康志向の高まりから食品事業者によるインターネットなどを活用した情報提供も進んでいます。
 アレルギー物質については、表示が義務付けられている特定原材料7品目(えび、かに、卵、乳、小麦、そば、落花生)と、表示することが推奨されている推奨項目21品目(アーモンド、キウイ、大豆など)があります。全国のアレルギー専門医師を対象とした平成30年度の調査によると、即時型症例の原因食品の77%を特定原材料が占め、推奨項目を含めると95%にも上ります。また、表示ミスによる誤食も125例報告されています。表示ミスは重大な事故につながる恐れがあり、製品の回収や公表など企業イメージにも影響します。製造者は、表示された調味料成分などの原材料を定期的に点検しましょう。
(2021年7月号掲載)

アナフィラキシー

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進むとともに、ワクチンの重篤な副反応として、複数の臓器に全身性のアレルギー症状を起こすアナフィラキシーが注目されています。アナフィラキシーは、医薬品のほか蜂毒、天然ゴム(ラテックス)や食品でも起こることがあります。
 アナフィラキシーの症状はさまざまですが、食品が原因の場合には、蕁麻疹や口の中の腫れなどの皮膚症状、息切れや咳などの呼吸器症状、さらに血圧低下や意識喪失などのショック症状が、その食品を食べた後30分程度で見られることが多いとされます。意識レベルの低下など重篤な症状は「アナフィラキシー・ショック」といい、生命の危険があるのですぐに救急車を呼ぶ必要があります。
 厚生労働省の人口動態統計によると、2019年のアナフィラキシー・ショックによる死者は62名で、内訳では蜂毒が11名、薬物が10名、食物が1名、詳細不明が40名となっています。また、小麦やエビ・カニなど特定の食品を食べた後に運動をして、アナフィラキシーを発症する「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」にも注意が必要です。さらに、花粉症のある人が生の果物、野菜や大豆(主に豆乳)を食べた直後に、唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれをおこす「口腔アレルギー症候群」も増加しています。
(2021年9月号掲載)

加工食品のアレルギー表示

 ご家族やご自身が食物アレルギーを持っている場合、加工食品のアレルギー表示はアレルギー発症予防の上でとても重要な情報です。そのため加工食品の製造業者は、正確な食品表示のために大変なエネルギーを注いでいます。しかし残念ながら、ラベルの貼り間違えやアレルギー物質の表示欠落などによる製品の回収が少なからず報告されています。
 食品衛生法と食品表示法の改正が2021年6月から完全施行され、新たに事業者が食品などの自主回収(リコール)を行った場合、リコール情報を行政に届け出ることが義務化されました。届け出のあった情報は、厚生労働省のホームページ「食品衛生申請等システム」の「公開回収事案検索」で誰でも確認することができます。公開されている回収情報は、商品名、製造業者情報、回収状況、健康被害などで、対象食品を喫食した場合の消費者の生命または健康に対する危害発生の可能性によって、クラスⅠからクラスⅢの3つのクラスに分類されています。
 2021年1月から7月までの食品表示に関わる自主回収情報100件のうち、消費者の生命または健康に対する危害発生の可能性が高いクラスⅠと分類されている情報は46件でした。なお、アレルゲン(特定原材料に準ずる品目も含む。)を含む旨に関する表示については、クラスⅠに分類されています。
(2021年11月号掲載)

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