- 日替わりコラム
Fri
7/15
2022
多くの昆虫は生物時計をもっていて、毎日一定の時刻に活動することが知られています。たとえばゴキブリは夜間に活動しますが、実験的に照明を切ってずっと暗闇状態にしても、その後も約24時間周期で活動がみられます。体内時計が作動しているのです。
コガネムシ科のオオクロコガネの成虫は、昼間は地中に潜んでいるのですが、夜になると地上に現れ活動します。最近、この夜間の活動が毎日ではなく2日に1度であることが発見されました※1 。このコガネムシを1日12時間だけ照明をつけた明暗条件からずっと暗闇の条件に移すと、その後も2日周期で活動がみられました。脳の一部を切除して活動への影響を観察したところ、脳間部と呼ばれる脳の中心部にある神経細胞がそのリズムの形成に重要であることがわかりました。なぜ2日リズムで地上に出現するのかは不明のようですが、とても興味深い現象です。
2日リズムは、コカマキリにも発見されています※2 。オオクロコガネの活動リズムと違って、孵化(ふか)行動の際に見られる一生に一度の出来事です。同じ卵包内から孵化してくる幼虫を観察すると、孵化が2日ごとにみられます。カマキリは共食いが起こりやすい昆虫ですので、1日おきに孵化するのは共食いを軽減する働きがあるのかもしれません。今後の研究が楽しみです。
※1 志賀向子、渡邉耕平 クロコガネ属の活動に見られる二日リズム 日本の科学者 pp.16~21.2022
※2 『カマキリに学ぶ』安藤喜一著 北隆館 2021
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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