- 日替わりコラム
Fri
8/5
2022
キャベツを栽培するとモンシロチョウやコナガが卵を産んで、孵化(ふか)した幼虫が葉を穴だらけにしてしまいます。それを防ぐために、農家は農薬を散布して害虫を退治します。すると農薬に負けないものが現われ、しばらくすると農薬がほとんど効かなくなってしまうことがあります。これを殺虫剤抵抗性と呼びます。抵抗性をもった昆虫は、自身の遺伝子の変異によって農薬を解毒するなど、耐性を高める機能が進化します。
ホソヘリカメムシはダイズなどの害虫ですが、腸内の共生細菌がカメムシに栄養を供給しています。最近、有機リン系の農薬に対するこのカメムシの抵抗性が、今まで知られていなかったユニークな仕組みによって達成しうることが証明されました※ 。
有機リン系の農薬を分解する細菌が土壌中に豊富にみられることは知られていましたので、その細菌をカメムシに感染させたところ、農薬抵抗性を示すようになったのです。
ところで、細菌によって分解された農薬の代謝物は、実は細菌にとって有毒でした。しかし、カメムシはこの代謝物を即座に体外に排出するため、その細菌は共生細菌としてカメムシの体内で生存できるのです。野外のカメムシを調査したところ、そのような抵抗性をもったものが少数ですが実在することがわかりました。
※ Kikuchi, Y. et al.( 2012) PNAS, 109: 8618―8622.
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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