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Wed

12/7

2022

ローマ字と日本語

 ローマ字は、道路や駅、氏名の表示などに見られますが、文章や手紙に使うことはほとんどありません。日本語を読めない人々のためにあると考える人も多いようです。しかし、本来は、日本人が日本語すべてをアルファベットだけで書くことを目的とした面がありました。
 漢字は難しい上に数限りなく、平仮名・片仮名もそれぞれ50ほどあります。ローマ字なら20ほどのアルファベットの組み合わせで日本語がすべて書け、文字教育に割く時間をほかの学習に回せるという声もありました。また、日本語を世界に広めていくのにも好都合と考えられたのです。ローマ字書きを支持する著名人も、少なからずいました。
 戦後すぐにローマ字教育は始まり、昭和20年代には、小学校で3年間、それぞれ40時間ずつ学ぶことも選択できたそうです。しかし、漢字仮名交じり文の便利さに慣れた社会においてローマ字表記は定着せず、次第に教育での扱いも軽くなっていきました。現在、ローマ字は小学3年の国語で学びますが、その時間は4~8時間程度、「日常使われている簡単な単語」の読み書きを学ぶことに限られています。
 ただ、ローマ字は意外な形で存在感を発揮することになりました。昭和末期に登場したワープロが「ローマ字入力」を採用し、ローマ字の仕組みを使って漢字仮名交じりの日本語を書く習慣が生まれたのです。

文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏

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