イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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6/13

2023

「拝見させていただく」は間違いか

 ビジネスマナーのサイトに、「拝見させていただく」という表現は二重敬語で誤りだと断ずるものがありました。しかし、文化審議会が示した『敬語の指針』の考え方からすれば、一概にそうとは言えません。
 それらのサイトが二重敬語とする理由は「拝見する」と「(させて)いただく」という謙譲語が重なっているから、ということのようです。しかし『敬語の指針』は、ふたつの言葉に敬語を用いて「て」でつなぐ用法を「敬語連結」として認めています。たとえば「お読みになっていらっしゃる」は、「読んでいる」の「読む」と「いる」をそれぞれ尊敬語である「お読みになる」と「いらっしゃる」に直し、「て」でつないだ形です。また、「御案内してさしあげる」は「案内してやる」の「案内する」と「やる」を謙譲語である「御案内する」と「さしあげる」に直し、「て」でつないだ形です。いずれも文法的に問題ありません。
 では、「拝見させていただく」はどうでしょうか。「見させてもらう」の「見させる」を、謙譲語「拝見する」を使って「拝見させる」にし、「もらう」を謙譲語「いただく」に直した上で「て」でつないでいると考えれば、二重敬語ではなく敬語連結であると言えます。もし問題があるとすれば、「(さ)せていただく」という言い方が本当に必要な場面なのか、過剰になっていないか、という点かもしれません。

文化庁国語課 主任国語調査官武田康宏

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