- 日替わりコラム
Tue
6/27
2023
新しい種を見つけ出す、これは生物に関心のある者にとっては大きな夢です。しかし、そう簡単には見つからないというのが常識でしょう。誤解を恐れずに言うと、新種を採集するのは難しいことではありません。昆虫の場合、すでに記載された種(既知種)は約120万、未記載種(新種)は間違いなくその何倍もいるのですから。
人跡未踏の地で昆虫採集すれば、採集品に多くの新種が含まれることは容易に想像できます。一方、日本のように調べ尽くされたように見える地域でも、自然植生の豊富な場所で、効率の良い採集法、たとえばスウィーピング(掬(すく)い採り法)やビーティング(叩き網法)で丹念に採集を繰り返せば、新種昆虫が得られる可能性は十分にあります。採集した昆虫はすべて大切に保存し、形態に基づいてグループ分けし、一つひとつ既知種と照合します。世界中のすべての既知種と形態が異なり、はっきりと区別できる個体が見つかった時、それが新種発見の瞬間です。
新種を採集するだけなら、アマチュアにも十分可能です。しかし、新種を発見するまでの一連の作業の遂行は、訓練を積んだプロフェッショナルな分類学者でなければまず無理です。その意味では新種の発見は、やはり容易なことではありません。それでも日本では毎年数百、世界では約2万もの新種の昆虫が発見され続けています。
稲岡徹
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス