- 日替わりコラム
Tue
9/12
2023
昨今の異常気象で、日本列島ではゲリラ豪雨や水害が多発しています。ハウスメーカーの株式会社一条工務店は2020年以来、耐水害住宅を開発していますが、そのひとつである「流されない家」の工夫が注目されています。
筆者の個人的な体験で恐縮ですが、福岡県に住んでいた幼少の頃、洪水に遭ったことがあります(昭和28年筑後川大水害)。比較的高台に建っていた我が家も床上浸水し、2階に避難しました。一帯の水田には水が溢れ、遠くを見ると人が屋根に乗ったまま家がゆっくり流されていました。その時の「家が流される」という悪夢のような記憶は、今でもはっきりと残っています。
洪水で水位が1mを超えると、一般的な住宅は浮力で浮き上がり、流されたり、ほかの建造物と衝突して損壊したりする危険があります。「流されない家」は、建物周囲の四隅に設けたポールに家屋を浮かせたまま係留し、建物が水没するような高い水位の水害でも、家屋の流失を防ぎます。水に浮かぶ船をアンカーに係留する方法と同じです。
係留装置にはバネを内蔵したダンパー※ が設けられ、水が引いた後は建物をほぼ同じ位置に戻します。地面とつながっている給排水管は、浮力時に接続部で分離される構造で、着地後は差し込むだけで復旧できます。
※ 振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減する装置
一般社団法人 発明学会 顧問平井工
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