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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

介護保険制度とお金(1)

介護問題研究家 中村和彦

介護保険制度を活用しよう

 国の医療費を軽減するなどの目的から在宅介護を促そうと、2000年4月から介護保険制度が始まりました。すでに10年以上経過していますが、まだまだ無関心な方が多いように思います。介護保険は社会保険などと同じように公的保険であり、40歳以上のすべての国民が加入し、保険料を支払うものです。40歳というのは、親の介護がそろそろ始まる年齢であり、理解が得られやすいと考えたからだといわれています。保険料は所得に応じて変わり、40~64歳の方は医療保険と合わせて徴収し、65歳以上は年金から天引きされます。現在(2013年)の基準額は年間5万3268円で、これを基準に所得に応じて増減します。
 保険を運用する保険者は市区町村で、被保険者は国民です。実際に保険を利用してデイサービスなどを利用すると、費用の9割を介護保険料や市区町村等が負担し、利用者は1割の負担※ となります。健康保険などは被保険者がただちに保険を利用して医療処置が受けられますが、介護保険はまず保険者による要介護認定が必要で、保険財源の使用に制限を設けているのです。制度への声はさまざまありますが、介護保険をうまく利用することで多くの家族が救われていることは確かです。「介護は家族・身内で」という考えから、「社会全体で支え合う」という認識に変わってきていることも、介護保険制度の大きな成果であるといえます。
(2013年1月号掲載)

※ 2018年8月から、所得により3割の負担

介護保険料について

 介護保険法では、3年ごとに介護保険料を見直す計画策定が義務づけられており、毎回少しずつ上昇しています。支払義務があるのは、40歳以上で、40~64歳(第2号被保険者)と65歳以上(第1号被保険者)とでは保険料の算出方法が異なります。65歳以上の介護保険料は自治体がまず基準額を定め、それを基に所得に応じて調整します。このため、自治体により格差があります。保険料の支払方法は、原則として老齢年金からの天引きです。基準保険料の全国平均は、月額4160円(第4期・平成21~23年度)。最も高額な自治体は、5770円(青森県十和田市)。最も低額なのは、2265円(福島県檜枝岐村、岐阜県七宗町)で、2.5倍の差があります。
 一方、40~64歳の介護保険料は、加入している医療保険の算定方式により決まります。保険料の支払方法は、現在支払っている医療保険に上乗せされ一括して徴収されます。会社員や公務員は、加入する健康保険組合などで標準報酬月額に保険料率をかけて保険料が決められます。ちなみに協会けんぽの場合は、介護保険料率は報酬月額の1.19%(平成21年3月)です。国民健康保険加入者は、国民健康保険の医療分と介護保険を合わせて計算されます。これは自治体独自の計算のため、住んでいる地域によって保険料が変わってきます。
(2013年2月号掲載)

要介護認定の手続き

 介護保険を利用すればさまざまなサービスが受けられますが、その前に市区町村が行う「要介護認定」の審査を受けなければなりません。これは、介護がどれくらい必要かを判断するための審査で、申請は市区町村の窓口で行います。ほかにも地域包括支援センターや介護保険施設でも申請は可能です。申請書には主治医の名前、住所、電話番号を記入する欄がありますので確認しておきましょう。認定費用はかかりません。
 申請が終わると、次に訪問調査を行い、その後、審査・判定が行われ、必要な介護の程度(要介護度)が認定されます。訪問調査とは、市区町村の担当員が自宅に訪れ、心身の状態や生活、家族、住居環境などを聞き取る調査のことです。この調査と主治医の意見書をもとに、保険、医療、福祉の専門家が審査し、要介護度が認定されます。認定の通知は、30日以内に届くのが通例です。
 認定の種類は、大きく2つあります。要支援(1~2)と要介護(1~5)です。要支援は、食事や排泄はほとんど自分でできるが、掃除など身の回りの世話において一部に介助が必要とされるというもの。要介護は要支援よりも重い症状となり、最も重度の要介護5はほとんど自分では何もできない状態のことをいいます。要介護度によって利用できるサービスが異なりますので、次回は介護サービスについて紹介します。
(2013年3月号掲載)

介護サービス(要介護1~5) ※2013年4月時点の負担額

 介護保険には在宅での利用を中心に、さまざまなサービスがあります。まず、自宅に訪問してもらうサービスには、訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーションがあります。訪問介護は、身体介護(食事・入浴・排泄の介助、通院の付き添いなど)と、生活援助(掃除・洗濯・買い物・食事の準備・調理など)があり、自己負担として、身体介護で254円(30分未満)。生活援助で190円(45分未満)。訪問入浴は1回につき1250円、訪問リハビリは1回305円が目安でしょう。また、点滴の管理や床ずれなどを対処する訪問看護と、歯科医・薬剤師などが訪問する居宅療養管理指導は、1回500円~800円ほどの負担となります。
 施設に通うタイプとしては、通所介護(デイサービス)と通所リハビリテーション(デイケア)があり、それぞれ8時間ほどで700円~1300円。デイサービスでは食事・入浴・機能訓練を、デイケアでは病院や診療所で機能訓練を日帰りで受けることができます。一方、施設に泊まるサービスとして、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)がありますが、費用はともに1泊1000円前後の自己負担(食事代・居住費が別途必要)となります。介護保険では、利用者はその費用の1割を支払うのが原則となっています。
(2013年4月号掲載)

介護用具と住宅改修

 自宅で介護する場合、介護を助けてくれる用具があります。福祉用具といわれ、車いす、特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、歩行器、つえ、徘徊感知機器、移動用リフト、自動排せつ処理装置などです。要介護度によって貸与されない用具もありますので、市区町村の窓口で相談してみましょう。費用は実際にかかったぶんの1割が自己負担※ で、残りは介護保険で支払われます。ただし、月々の限度額がありますので注意してください。
 一方、福祉用具購入でも介護保険が適用されます。対象となるのは、入浴補助用具や腰掛便座、簡易浴槽、移動用リフトなどさまざまで、それぞれの自治体により異なりますので、調べておきましょう。基本的に毎年10万円までが限度で、その1割が自己負担※ です。
 用具以外にも、家自体を改修する費用についても介護保険が適用されます。手すりの取り付け、段差の解消、滑り止めや移動をスムーズにするための床や通路の変更、引き戸などへの扉の取り替え、洋式トイレへの変更など、介護しやすい環境を整えるための小規模な改修に対して、利用限度額20万円までの費用が支給されます。工事の前に保険給付の対象になるかどうか、ケアマネージャーまたは市区町村の窓口で相談しておきましょう。
(2013年5月号掲載)

※ 2018年8月から、所得により3割の負担

介護施設サービス ※2013年6月時点の負担額

 介護保険では要介護者に対し、在宅で介護を提供する居宅サービスと、施設で提供する施設サービスがあり、施設サービスには介護老人福祉施設(特養=特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健=老人保健施設)、介護療養型医療施設(療養病床など)があります。特養は、常に介護が必要で自宅では介護できない人が対象で、老健は症状が安定し、リハビリに重点をおいた介護が必要な方が対象です。費用(1割負担)としてはどちらも2~3万円程度。療養型は、症状が安定しているものの長期間の療養が必要な方が対象で、費用は2~4万円程度です。3つとも多床室(相部屋)と個室があり、若干料金が異なります。
 介護サービス費は1割負担ですが、このほか居住費、食費、日常生活費がかかり、その合計が自己負担となります。特養では、居住費は多床室でそれぞれ1日、320円、ユニット個室で約2千円、食費1380円がかかります。個室は3種類ほどあり、料金が異なります。最も高額な新型ユニット個室を要介護5(最重度)の方が利用した場合、介護費・居住費・食費のセットで1か月で約13万円になります。逆に、要介護1の方が相部屋を利用した場合、約7万円です。
 老健の費用は特養とほぼ同じで、療養型はそれより少し高くなっています。特養同様に介護度や施設の体制、部屋により費用が異なります。
(2013年6月号掲載)

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