- 日替わりコラム
Tue
10/24
2023
後から来たドブネズミが定着するようになったビルがあります。もともとそこには先住のクマネズミがおり、飲食店、食品売場、ゴミ集積場を生活の場としていました。
ある時、ゴミ集積場でネズミを捕獲していると「キーキー」と大きな声が聞こえ、見ると小さなネズミが粘着トラップに捕まっていました。捕獲個体はすぐにドブネズミだと判別でき、さらに幼獣だったため、未捕獲の親や同腹の仔がいることも予測されました。その後、ゴミ集積場では予測のとおり成獣のドブネズミも捕まるようになりました。
ドブネズミはクマネズミを襲うことはなく、餌を横取りするだけでした。クマネズミもそれを知っているのか、ドブネズミが近づくと餌を置いて立ち去ります。クマネズミは餌が豊富にある限り、襲われないことを学習しているのでしょう。この時点でゴミ集積場では、平面的に動くドブネズミと立体的に動くクマネズミの観察ができました。
しかし数か月後、そのビルに野良ネコが侵入してきたのです。ネコは、生ゴミが豊富にあるにもかかわらず、ネズミを狙いました。平面的に動いていたドブネズミに不利な状況です。ドブネズミも立体的な行動を取るように変わり、その時点でゴミ集積場からクマネズミはいなくなり、捕獲されるのはドブネズミだけになりました。
イカリ消毒株式会社 名誉技術顧問谷川力
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