イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

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12/4

2023

木枯らしにも凛々しい山茶花(さざんか)

 山茶花の薄い花びらは、木枯らしに吹かれてはらはらと地上に散ります。枯れないうちに散る花びらが地上に敷き詰められている様(さま)が美しく、好きです。他方、同じツバキ属でも近縁種の椿は、春を迎える頃に咲き、花は丸ごとポタッと落下します。
 山地に自生する山茶花の野生種の北限は九州や四国です。メジロやヒヨドリが蜜を求めて訪れ受粉する鳥媒花(ちょうばいか)で、江戸時代には多様な花色や八重咲の園芸品種が作られました。また、多くの市区町村の木・花に選ばれています。
 山茶花が出てくる歌はいくつもありますが、童謡『たきび』の2番の歌詞はとても懐かしいです(巽聖歌作詞)。もう半世紀も前の小学生の頃は、山茶花の咲く頃に、たいがい家の前で落ち葉焚きをして、サツマイモを焼いていました。焚火の燃える様子は、身も心も温かくしてくれました。
 山茶花の種子から採れる液状の油は、椿油と同様に軟膏の材料として乾燥肌改善などに使われます。葉を煎じた液は香りが良いことから洗髪に使われ、お茶と混ぜると花の香りがし、甘さを感じられるそうです。花言葉は「ひたむきさ」、「困難に打ち勝つ」です。真冬に抗う花姿からの着想なのでしょうか。

東京学芸大学 名誉教授・植物と人々の博物館 研究員木俣美樹男

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