- 日替わりコラム
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12/15
2023
日本では古くから昆虫を食する習慣があります。イナゴや蜂の子の佃煮などが代表的です。
世界的な食料不足への対策として、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)より昆虫を飼料や食料として有効利用する提案がなされ、さまざまな国で研究開発が始まりました。EUでは2021年に昆虫タンパク質の家禽や豚飼料への利用を認め、さらにバッタ、コオロギなどを食用とすることを許可しました。またオランダでは、大規模なアメリカミズアブ(ハエの一種)の養殖用ハイテク農場が稼働しています※ 。生産量の8割はペットの飼料、残りは家畜の飼料として利用されています。今までは魚粉や大豆が使われてきましたが、それらは人間の食料でもあり、高価です。この農場では毎年1万5000tの幼虫を生産しており、1haあたり年間1万tのタンパク質が賄えるそうです。同じ面積で大豆を栽培しても年間1tがせいぜいであることを考えると、その生産能力は驚異的です。ハエの餌は、フライドポテト工場やほかの食品工場から出される廃棄物を利用しています。この企業では、EU域内に同様の工場をさらに10か所展開する計画だそうです。養殖技術の開発には10年を費やしました。模倣や流行にとらわれない長期的な展望と計画性が成功の鍵のようです。
※ Business Insider Japan(https://www.businessinsider.jp/post-249047)
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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