- 日替わりコラム
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12/18
2023
向田邦子さんを世の中が客観視して捉えた際に、「この人は凄い!」と思わせた代表作は、TBS水曜劇場『寺内貫太郎一家』になると思います。さらに、連続ドラマで脚本を単独執筆した出世作でもあります。TBS系列で1974年と1975年に放送されたこの作品は、現在でも多くの人たちに語り継がれており、第7回テレビ大賞も受賞しました。劇中に描かれている人間像は、今後細かく書いていくとして、ざっとまとめると下記になります。
それまでのホームドラマは「母親」が主体であったといえます。『細うで繫盛記※1 』や『ありがとう※2 』などがその代表作です。そのような状況下で「父親」を軸にしたドラマの構成は画期的だったといえます。これは向田さんにとって父親・向田敏雄さんの存在が心理的な骨格になっていたからに他なりません。今様に言えばファザコンですが、父親を中心とした家族を描いていく中で、向田さんの真骨頂である「記憶力の良さ」と「冷徹な観察眼」が冴える作品でもありました。
単なるコメディに終始せず、「喜劇は悲劇である」という言葉を体現したこのドラマにおける日常には「触れられたくない真実や過去」が隠れている、でもそれを背負いながら家族は生きている。それを数回に分けて書いていきたいと思います。
※ 1 よみうりテレビ・東宝制作のドラマ。1970年〜1971年に日本テレビ系列で放送
※ 2 TBS・テレパック制作のドラマ。1970年〜1975年にTBS系列で放送
写真技術研究所別所就治
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