- 日替わりコラム
Wed
12/20
2023
犬は関心のあるにおいをかすかに感じたとき、その発生源を知るためにクンクンと鼻先を動かし積極的ににおいの元を嗅ごうとします。その能力を利用して訓練した犬が、麻薬犬や警察犬です。
空気中に漂っているにおいは、鼻腔(鼻の穴)の天井にある嗅上皮と呼ばれるところで捉えられます。嗅上皮は粘膜で覆われており、嗅神経細胞によって構成されています。嗅神経細胞には嗅覚受容体が無数にあり、においを感知するとその情報を嗅球という部位に伝え、嗅球から脳内に伝わっていきます。
嗅覚受容体の数は動物種によって異なるであろうことは容易に想像できますし、嗅覚受容体遺伝子数の多い種のほうが、よりにおいを嗅ぎ分ける力が高いと想像できます。東京大学大学院農学生命科学研究科・ERATO東原化学感覚シグナルプロジェクトの新村芳人※ 特任准教授らの研究グループによる2014年の発表では、犬の嗅覚受容体遺伝子数は811個でした。調べられている動物の中でその数が最も多かったのはアフリカゾウの1948個で、ヒトは396個。マウスは1130個、ウシは1186個、バンドウイルカは12個でした。
嗅覚は多くの動物にとって生きるために必須の感覚ですから、遺伝子数は動物の進化の過程や生きてきた環境を想像させてくれます。
※ 現在は宮崎大学農学部教授
井本動物病院 院長井本史夫
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