- 日替わりコラム
Thu
2/8
2024
恐竜化石は地層の中に埋まった状態で発見されるため、その恐竜が生前、どこでどのように暮らしていたのかは、骨や歯などの硬組織から推定しなくてはなりません。アメリカ・サウスダコタ州で発見されたテスケロサウルスは、鳥盤類に分類される2足歩行の草食恐竜です。白亜紀最末期の約6800~6600万年前、ティラノサウルスやトリケラトプスなどと同じ時空間に生息していました。ノースカロライナ自然科学博物館に展示されているテスケロサウルス化石についての新しい研究が、昨年の11月6日に発表されました。
頭部をCTスキャンし、化石の中に空洞として残っていた脳と三半規管の形と大きさを復元してみると、嗅覚がとても発達している一方、聴力はあまり発達していなかったらしいということが明らかになりました。この組み合わせは、地下に穴を掘って暮らす哺乳類などに見られる傾向だそうです。テスケロサウルスも、地中に潜ることでティラノサウルスなどの肉食恐竜たちと棲み分けていた可能性が出てきました。テスケロサウルスの全長は4m近くと大きいので、体が小さい子どもの頃だけ地下の巣で暮らしていたのかもしれません。または彼らの祖先が地中で暮らしていただけで、テスケロサウルスはその祖先の暮らしを脳などの軟組織に残しているだけという可能性もあります。
独立行政法人 国立科学博物館 副館長・研究調整役真鍋真
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