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5/27
2024
米国のビジネス界発祥の言葉に「ファースト・ペンギン」という言葉があります。南極の氷上に多数のペンギンがいる中で、最初に魚を求めて、天敵がいるかもしれない海の中に飛び込む姿を擬人化した表現です。
ビジネスの世界では、リスクを取る勇敢な行動であるとともに、「先行者利益」を得る実利も伴います。ファースト・ペンギンは主に事業における企業の姿勢を指すものですが、それが「サステナ経営」でも大きな意味を持つのです。たとえば米アップルは10年以上も前に、他社に先駆けてすべての使用電力を再生可能エネルギーに変えただけでなく、製造委託先にも再エネへの転換を取引継続の条件にしました。これにより、再エネ調達のノウハウがサプライチェーンに蓄積し、それが脱炭素時代における委託先各社の競争優位性につながったのです。
環境面だけでなく、人権やダイバーシティ(人材の多様性)などの領域においても、どの国にもファースト・ペンギンが存在します。たとえばパナソニックホールディングスは2021年にウェルビーイングの推進を打ち出し、働き方によっては「週休3日」も可能にしました。人件費の上昇も懸念されましたが、これにより、優秀な人材の確保や、従業員満足度の向上が期待できます。勇気ある選択には、「先行者利益」がもたらされるのです。
『オルタナ』編集長森 摂
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