- 日替わりコラム
Thu
7/4
2024
フランスの作家マルセル・プルーストの著書『失われた時を求めて』の中に、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にした時に、家族と過ごした幼い頃の思い出が蘇ったという場面があり、香りを嗅いだ時に過去の記憶や感情を思い出すことを、プルースト効果といいます。
五感のうち、視覚や触覚、聴覚、味覚は脳内の大脳新皮質を経て、記憶を司る海馬に届きます。これに対して嗅覚は、情緒や欲求をコントロールしているといわれる大脳辺縁系に直接送られるのだそうです※ 。
ある老人が、死ぬ前にどうしても鮎を食べたいというので用意したところ、「これではない」と言う。怪訝(けげん)に思った家族が、老人の故郷の川の鮎を取り寄せたところ、涙を流しながら食べたというのです。鮎は「香魚」とも書くように、その川に生えた水苔を食べるため、それぞれに川特有の微妙な香りの違いがあるのだそうです。
こんな話もあります。子どもの頃に母親が作った「イカ焼き」の風味が忘れられず、もう一度あの味をといろいろ調べたところ、新鮮なイカの肝を使っていたのではないかということに気がつき、見事に母の味「イカの肝焼き」の再現に成功したのだそうです。
食品に限らず、記憶に強く残る「香り」を活用した商品をもっと考えてみても良いのかもしれません。
※ 諸説あり
H・B 山越氏が10 年にわたり本誌『月刊クリンネス』に連載したものを加筆修正した書籍が『「カレーの王子さま」開発責任者から若き開発者への手紙~ヒットのためのヒント集~』として文芸社から上梓されました。
↓山越氏の過去の記述を読んでみたい方はこちらから
https://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-24619-2.jsp
商品開発アドバイザーH・B 山越
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