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2024

スズメバチの葛藤

 スズメバチは、春になると越冬した女王バチが自分で巣を作り、卵を産んで育てます。育った成虫は働きバチとして巣を大きくし、子育てを担当します。夏は食物であるハエ、カメムシ、イモムシなどが豊富で、巣はどんどん大きくなります。秋になると食物となる昆虫の数も減ってきて、冬支度が始まります。それは、新たな女王バチを育てることです。種類によっては、数千から数万頭の女王バチを育てるものもあります。ただし、越冬して春まで生き残れる数は少なく、たとえ生き残れたとしても、春の営巣と子育ての重労働に耐えるには強靭な体力を備えていなければなりません。
 そのような事情から、スズメバチは、いつ巣の拡大から女王バチの生産に切り替えるかという葛藤に直面します。働きバチから女王バチと雄バチの生産に切り替えてしまうと、その時点で巣の勢力拡大をあきらめねばなりません。一方、切り替えが遅くなれば、秋の低温で食物不足になり、女王バチの生産がうまくできなくなる可能性が増します。この「葛藤」について、シダクロスズメバチで実験的に調べた最近の研究※ によると、働きバチの数が多く、巣が大きいほど、働きバチから女王バチの生産への切り替えが早く起こること、そして早めに女王バチの生産を始めた巣のほうが、丈夫な女王が育つことがわかりました。

※ Saga T. et al.(2024)Insectes Sociaux DOI: 10.1007/s00040-024-00953-8

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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