- 日替わりコラム
Wed
8/14
2024
今年(2024年)の5月以降に北米でセミの大発生が起こっています。13年と17年周期ゼミが同時に羽化しているからです。前回この同時発生が起きたのは1803年で、次回は221年後です。周期ゼミの属名は Magicicada といい、ラテン語で魔法のセミという意味です※1 。17年ゼミの集団は中西部に、13年ゼミの集団はより広く南東部にまで分布しています。一斉に鳴くセミの声は100dBにも達するほどだそうです。現在では17年ゼミは3種、13年ゼミは4種が知られています。出現の年の異なる12集団が17年ゼミにみられ、13年ゼミには3集団が知られています。したがって、セミが全く出てこない年もあり、日本のセミの状況とは異なります。年によってそれらの集団に通し番号が付けられています。今年の集団はNo.13(17年ゼミ)と19(13年ゼミ)です。
周期ゼミが進化した理由として、天敵がかかわっているという仮説があります。短い周期で発生する捕食者や寄生虫の出現を避けるには、13や17という長い周期が有利であると考えられます。また、周期の異なる集団が同時に出現すると交雑が起こるからだともいわれています。交雑すると周期が乱れて、それらの子孫はメイン周期からずれるので、交尾相手が少なくなり絶えてしまいます※2 。そこで、同時発生の起こる確率の低い13と17という素数周期が生まれたようです。
※1 竹田真木生・トマス D. モーガン(1998)「221年目の喧噪―周期ゼミのなぞ」『インセクタリゥム』10:272―279
※2 『素数ゼミの謎』吉村仁著 文藝春秋(2005)
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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