- 日替わりコラム
Thu
9/12
2024
20年ほど前、コンビニエンスストアには昆虫が集まり、対策として多くの店では昆虫が効果的に集まるブラックライトを搭載した電撃殺虫器を取り付けていました。虫が来ると焼かれてパチパチと音が聞こえました※1 。最近では虫たちが誘引されない長い波長を使ったLEDライトに代わり、夏でも虫をあまりみかけません。
最近、灯りに来る虫の数が減ってきたのは、虫が進化したからであるという研究が報告されました※2 。アメリカでトマトやソルガムなどさまざまな作物の害虫であるアメリカオオタバコガでは、雌のフェロモンを合成して作ったトラップではたくさんの雄のガが捕獲されるのに対し、ブラックライトに来る数が、20年前(1998~2002年)と比べて、最近5年間(2018~2022年)では激減していました。
灯りに来る虫は、翌朝には鳥に食べられたり、傷つけられたりして産卵できなくなったり、棲息地に戻れず次世代を残せなくなったりします。そのために灯りに来る性質をもった個体が集団内に少なくなり、灯りに来ないものが増えていったと考えられています。もしそれが正しければ、灯りの少ない地域では、そのような淘汰は起こっていないと考えられますが、実際に、フェロモントラップとブラックライトでの捕獲数の変動に過去と現在で変化はみられませんでした。
※ 1 『昆虫にとってコンビニとは何か?』高橋敬一著 朝日選書(2006)
※ 2 Battles I et al.(2024)Journal of Insect Conservation(https://doi.org/10.1007/s10841-024-00588-x)
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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