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2024

人生永遠のテーマを追った作家 向田邦子(15)「大根の月」(前編)

 向田邦子さんの名著『思い出トランプ』の中に「大根の月※ 」という短編小説が収載されています。
 英子が秀一と結婚をする前、昼間の空を見上げた際に白い月の姿があり、それは大根を輪切りにした時のイメージに似ていました。結婚後、健太が生まれます。健太が6歳になったある日、英子が調理で包丁を使っている時に、ちょっかいを出した健太の右の人差し指を誤って2cmほど切り落としてしまいます。それがきっかけで、同居している姑だけでなく夫との仲も悪くなり、健太も自分より姑になついてしまいます。事件があった当時、英子は2人目の子を妊娠していましたが、ストレスから流産してしまいます。一層姑との関係も険悪になり、夫も頼りにならず、英子は家を出ます。「指」という文字を見るたびに胸が騒ぎ、健太と同じ小学1年生を見ても心がうずく。秀一は離婚を前提とした別居を半年続けたところで、英子を迎えに来ます。英子は秀一の「戻ってくれ」という言葉に揺れる心のまま、空を見上げて昼の月が出ていたら戻る、出ていなかったら戻らないと思うが、気持ちの整理がつかず月を探すことができません。それは、「一番大切なもの」と「一番おぞましいもの」が潜む世界に、戻るか否かの選択を迫られるからです。
 以上、今号では筋書きを紹介しました。次号で解題します。

※ 1989年1月に関西テレビ放送(KTV)「直木賞作家サスペンス」の1話としてドラマの放送履歴がある。
  出演者は萬田久子、辰巳拓郎、山岡久乃ほか

写真技術研究所別所就治

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