- 日替わりコラム
Tue
2/18
2025
猫の祖先はアフリカやアラビア半島に住むリビアヤマネコで、その家畜化には農耕の歴史が大きく関わっています。約1万年前、西アジアで農耕が始まったことで穀物倉庫ができ、倉庫の穀物を狙ってネズミが集まり、そのネズミを狙ってリビアヤマネコが住み着き、やがて人との付き合いが始まり、家畜化の道を歩み始めたからです。つまり猫のルーツは、人々が穀物倉庫におけるネズミ退治能力に期待したことに始まるのです。猫たちは、その後、貿易船に乗せられて世界中に運ばれていきました。積み荷をネズミの被害から守るためでした。そして運ばれた先の国でもネズミ退治で大活躍したのですが、他方で猫たちの形態は気候に適応して変化していきました。北の国に行った猫たちは大型でズングリとした体つきに、蒸し暑い国に行った猫たちはスレンダーで四肢の長い体つきにといった具合です。そうやって生まれた地域的に異なる形態が現在の品種のもとになっています。
人類は多くの家畜を作り出しましたが、どの家畜にも利用目的があり、その目的のために改良を行い品種を作り出してきました。その点、猫は最近まで品種改良が行われなかった珍しい家畜だといえます。猫に求められたのはネズミ退治でしたから、猫でありさえすれば十分で、改良の必要はなかったのです。
動物ライター加藤由子
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