- 日替わりコラム
Wed
3/12
2025
土の中で暮らすことが知られているモグラですが、ほぼ一生の間地上に出ることがないことはあまり知られていません。モグラが土から頭を出して埋められている写真が巷にあふれているのが、誤解を招いている原因の一つなのでしょう。地面に土が盛り上がっている「モグラ塚」を見て、モグラがいることを認識する方もいるでしょう。モグラ塚はモグラが地上と地中を行き来する「トンネルの出入り口」と勘違いされがちです。これは「モグラたたき」というゲームによる誤解でしょう。実際にはモグラは地上に出ることはなく、モグラ塚はトンネルを掘る際に退けた土を地上に押し出したものにすぎません。
「でも、モグラが地上を歩いているのを見たことがある」という方もいると思います。地上に出ないのは彼らが独立生活を始めてからのことで、それまでに一度地上に出ることはあるようです。雌のモグラは春にトンネルの奥深くにある巣室で3~6匹の仔を出産します。1か月少々でほぼ大人のサイズに成長しますが、モグラはとても縄張り意識が強いので、母親は十分成長した仔をライバルとして認識するようになります。トンネルから追い出されて行き場を失った仔は、仕方なく地上をさまよいます。運よく猫などに見つからなければ、永住のトンネルを築くことができると考えられています。
国立科学博物館 動物研究部川田伸一郎
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