イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

表示間違いを防止する仕組み作り

フード・オフィス・天明 代表/上級食品表示診断士 天明英之

食品表示は消費者と食品事業者をつなぐ信頼のきずな

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアには、野菜・魚・肉などの生鮮食品やマヨネーズ・即席めん・ソーセージなどの加工食品が所狭しと並んでいます。そして、消費者はその中から自分の欲しい商品を選んで購入しています。生鮮食品は色や匂いなどを手掛かりに自分の欲しいものを選ぶことができますが、加工食品はどうでしょうか。ソーセージのように内部が見える袋に入っているものは見た目で選ぶことができますが、ほとんどの加工食品はパッケージに入っており、色・匂いなどから選ぶことができません。そこで重要になってくるのがパッケージに書かれた食品の表示です。消費者はパッケージに書かれた食品の表示を頼りに購入せざるを得ないのです。
 そのため、消費者が希望の加工食品を選択できるように、国はその食品の安全性の情報、品質の情報、健康に影響する情報を提供するための食品表示のルールを定め、食品事業者はそれを守って表示をしています。すべての加工食品が同じルールに則って表示されていますので、消費者はこの食品表示を見て、比較して、選択できるわけです。
 食品事業者が投げた食品表示というボールを、消費者が確実にキャッチし選択に活かしていく。このことが消費者と食品事業者の信頼のきずなを構築する大きな一歩となっていくのです。
(2024年1月号掲載)

消費者に情報を伝える食品表示とは

 加工食品のパッケージには、商品名やその商品を引き立てるキャッチコピーや写真、イラストが描かれていますが、パッケージ上で消費者に必ず提供しなければならない情報を義務表示項目として国が定めています。それぞれの項目に、次のような情報を伝える役割があります。
(1)食品の状態や特徴を伝えるもの
 どのような食べものであるかを表す「名称」、何から作られているかを表す「原材料名、添加物」、どこの産地の原料を使ったかを表す「原料原産地名」、遺伝子組換え食品を使用しているか否かを表す「遺伝子組換え表示」、だれがどこで作ったかを表す「製造者等」
(2)安全に食べるための情報を伝えるもの
 いつまで食べられるかを表す「賞味期限、消費期限」、どのような状態で保存すればよいかを表す「保存方法」、どのようなアレルゲンが入っているかを表す「食物アレルギー表示」
(3)保健や健康面に関係する情報を伝えるもの 「栄養成分表示」
 これらは食品表示法の食品表示基準で細かくルールが定められており、食品事業者はこのルールに従って正しく表示することが求められています。そのためには、表示間違いを防止する仕組み作りが重要となってくるのです。
(2024年3月号掲載)

表示間違いの要因解析

 食品表示法の第4条に食品表示のルール(食品表示基準)を定めることが規定されており、第5条には食品事業者は食品表示基準を遵守することと規定されています。もし、遵守できなかった場合は行政から処分(指示公表や回収命令など)を受けることになります。行政処分に至らないまでも、食品事業者自らが表示間違いを発見したときは、安全性に係ることがある場合は自主回収、安全性に係らない場合でも、行政への届け出、出荷停止、表示の修正などが必要になってきます。つまり、表示間違いの食品を市場に流通させてしまうと、食品事業者は費用の負担がかかるだけでなく、社会的な信用をなくす危険性もはらんでくるのです。
 では、なぜ表示間違いが起こるのでしょうか。故意に誤った表示の食品を市場に流通させ利益を得ることは論外としても、ついうっかりの表示間違いを起こしてしまうのはなぜでしょうか。
 私は3つの要因があると考えています。1つ目は食品表示作成時の要因です。2つ目は出来上がった食品表示のチェック時の要因です。3つ目は工場やバックヤードでの食品表示の印字時の要因です。この3つの段階での間違いの要因を解析し、対策を打つことによって表示間違いのない食品を確実に市場に流通させることができるのです。
(2024年5月号掲載)

表示作成時の間違いの防止

 パッケージの表示には、必ず表示しなければならない義務表示と、義務表示以外の項目を伝える任意表示があり、任意表示の部分は、消費者に誤認を与えなければある程度自由に表示することができますが、義務表示の部分は表示を間違えると法律違反になってしまいます。
 では、義務表示の表示間違いを防止するためにはどうしたら良いでしょうか。私は大きくふたつあると思っています。ひとつ目は表示作成に必要な当該食品の情報を幅広く正確に集めることです。食品を構成している原材料の種類・配合量、原材料が加工食品の場合は、その原材料の種類と配合量、原材料の原産地、原材料に含まれるアレルゲン、食品の栄養成分、当該食品の製造方法などの情報を、原材料メーカーや自社の開発や製造部門から入手しておきます。正しい情報、必要な情報が入手できなければ、正しい表示は作成できません。
 ふたつ目は食品表示を作成するためのルールを正しく理解しておくことです。食品表示ルールは食品表示法、計量法、米トレーサビリティ法など多岐にわたります。食品ごとに適用されるルールが異なりますので、自分で勉強したり、人に教わるなどして、最新の表示ルールを入手しておくことが必要です。正しい食品の情報と正しい表示ルールの知識を持ってこそ、間違いのない正しい食品表示が作成できるのです。
(2024年7月号掲載)

完成した表示の再確認と工場での印字ミスの防止

 パッケージに義務表示および任意表示を印刷するためには、パッケージのどの位置に義務表示の一括表示や栄養成分表示を配置し、どの位置に任意表示の商品名、キャッチフレーズ、写真などを配置するかを決め、デザイン会社や印刷会社の協力のもと、印刷の設計図である版下を作成する必要があります。この時点で重要なのは、完成した表示が正しく版下に反映されているかを再確認することです。括弧の位置が違っていたり、漢字が間違っていたりすることが時々あるからです。それを最低2人で声を出して目で追って間違いを見つけ出す、これが正しい表示のパッケージを作成する最後の大事な作業となります。
 正しい表示のパッケージが完成していても、完成したパッケージを使用して工場で商品を製造するときに、賞味期限の印字を間違うようなことがあっては元も子もありません。印字間違いを防止するためには何度も確認することが必要です。製造の最初にパッケージに印字された賞味期限が間違っていないかを複数人でチェックし、間違っていないことを確認してから製造をスタートさせるのです。
 表示間違いを防止するための表示チェック時、工場での印字時のポイントは複数人での確認です。1人では見逃してしまうところを複数人で行うことで見つけ出すことができるのです。
(2024年9月号掲載)

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