- 日替わりコラム
Mon
12/7
2020
ある消費者が、贈答品の密封容器入りフルーツゼリーを食べようとしたところ、ゼリーの中から小さな虫が出てきました。製造会社に連絡すると別のゼリー菓子が送られてきましたが、この菓子の中にも虫を見つけてしまいました。同じ会社の菓子に繰り返し虫が混入する状況は衛生上の問題があると考えた消費者が、保健所に届け出ました。
届け出のあった菓子は未開封の容器入りで、容器外から虫が侵入した形跡は認められず、ゼリーの中には虫(ショウジョウバエ)が羽を広げた状態で固まっていました。虫体のカタラーゼ試験※ の結果は陰性で、製品の加熱工程前に容器内に混入した可能性が考えられました。
製造所を管轄する保健所の調査結果では、原材料置き場と製造室の間に厳密な隔壁はなく、ゼリーの充填作業は開放状態で行われていました。また、原材料置き場内ではショウジョウバエの発生も確認されました。
今回の苦情は、容器へのゼリーの充填時に施設内で発生した虫が飛翔して混入し、容器の密封後に加熱殺菌と冷却が行われましたが、検品でも異常を発見できずに出荷されたことにより発生しました。
贈答用の食品に異常があった場合には、受け取った人のみならず送り主の期待も裏切ることになります。消費者の期待に応える商品提供のためには、小さな異常も見逃さない想像力と地道な取組みが大切です。
※ カタラーゼは、多くの生物が持つ酵素の一種。異物(生物)に過酸化水素液を滴下してカタラーゼの活性(酸素の泡の発生)が認められなければ、加熱を受けたことが推測できる
元東京都杉並保健所 食品衛生監視員谷口力夫
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