イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

老化のサイン(2)

クリンネス編集室

腸の老化サイン

 加齢に伴って腸の消化機能も低下してきますが、なかでも腸内細菌叢(さいきんそう)と呼ばれる、腸の中に住みついている大腸菌や乳酸菌などのバランスに影響が出てきます。最近は悪玉菌、善玉菌といわれることが多いのですが、歳をとると腸内で悪玉菌の代表である大腸菌やその仲間が増え、善玉菌である乳酸菌が少なくなってきます。その結果、消化不良を起こし、下痢気味になったり、逆に便秘が続いたり、おならが出やすくなったりと、さまざまな症状が出てきます。
 食生活に注意することで腸内細菌叢を健康に保ち、腸の機能を健全に保つことが可能です。野菜や海草など食物繊維を含む食品を中心に、バランスのとれた食事を心がけることで、腸内の善玉菌の働きを助けることができます。また、ヨーグルトなどを継続的に食べて乳酸菌を腸内に補給し、悪玉菌の増加を抑えることも効果的です。乳酸菌製剤の摂取も有効ですが、食物繊維を摂らないと腸内で善玉菌が発育する条件が整いません。また、タンパク質が不足すると腸の筋肉も弱くなってきます。その意味では栄養のバランスも老化防止に重要です。腸内細菌叢が健康に保たれると、免疫力も高まります。最近は植物性の乳酸菌を利用した食品も注目されています。バランスのとれた食事に、ヨーグルトなどの食品を上手に組み合わせて、腸の老化を防止しましょう。
(2012年7月号掲載)

爪の老化サイン

 歳を重ねるにつれて皮膚に「しわ」が目立つようになりますが、同じように爪にも「しわ」が生じてきます。「しわ」といっても皮膚のしわとは違って、爪の表面に縦に線状の模様が浮き出てくるもので、爪甲線条(そうこうせんじょう)と呼ばれ、40歳台以降によく見られるようになります。どちらかといえば、男性によく見られます。
 爪は本来、加齢による変化の少ない器官です。この爪甲線条にしても老化現象だけでなく、2~4歳ぐらいの小児にもよく見られますし、青年期においても栄養不良などで見られることもあります。縦じわが出現しても機能的には問題ありません。
 爪の横方向にも、しわができることがあります。この横じわは加齢現象ではなく、栄養不良や免疫低下、あるいは外傷後など身体が弱っているときなどによく現れます。歳をとると、食生活の好みが淡白になって、タンパク質の摂取が不足する場合もあるので注意が必要です。
 爪にしわが目立つようになったら老化のせいだけにせず、食生活を振り返ってみるのもよいでしょう。
 脂肪の摂りすぎを抑え、良質なタンパク質を積極的に摂取し、食事のバランスにも気を配ることが、爪のしわの予防だけでなく、全身の老化防止にもつながります。
(2012年8月号掲載)

肺の老化サイン

 高齢になると肺の機能も低下してきます。肺は空気を吸い込んだりはいたりして、酸素と二酸化炭素のガス交換を行っていますが、これは肺の中の肺胞(はいほう)という組織で行われます。加齢に伴い肺の弾力は低下して、肺胞も若い人に比べると拡大してきます。その結果、呼吸の効率も悪くなってきますが、通常の老化の度合いを超えて呼吸機能を低下させる高齢者に多い肺の病気に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。
 COPDでは肺胞の構造が壊れ、吸い込んだ空気がうまく排出できなくなり、肺の中に空気が溜まった状態になって呼吸が苦しくなります。痰が増えますが、うまく痰を出せず、咳も増えます。45歳以上では、日本人の8.5%、およそ500万人のCOPD患者がおり、加齢に伴って患者は増大すると言われています。
 COPDは、肺そのものの老化現象よりも、喫煙の影響が大きいと考えられています。COPDは長期間の喫煙習慣によって起こります。平均寿命が短かった時代には、喫煙率が高くても、COPDが発症する前に、脳卒中など他の病気で寿命を迎えた方も多かったのでしょうが、長寿社会になり、COPDの患者も増大したと思われます。動物実験では、喫煙状態になければCOPDは出現しないという報告もあります。咳や痰の多い高齢者にならないためにも、禁煙を心がけましょう。
(2012年9月号掲載)

膝の老化サイン

 高齢になると膝の痛みを訴える人が増えてきます。加齢にともなって、全身の関節も滑らかさが失われてきます。これは主に関節を形づくる関節軟骨が硬くなり、また磨耗してくるためと考えられています。
 その結果、身体の節々が痛むことになり、特に体重がかかる膝関節は負担が大きいため、膝の痛みが多くなってきます。また、高齢者では変形性膝関節症という病気も増えてきます。これも膝関節の加齢による変化で、関節が変形してしまうことが発症の引き金になります。
 膝の老化を抑え、変形を防ぐためには、膝関節を支える筋肉を強化する必要があります。太ももをはじめとする足の筋肉を鍛えると、それらの筋肉の支えによって、膝関節への負担が減り関節軟骨の磨耗も減って、関節が正常な状態に保たれることがわかっています。普段から運動したり、よく歩く習慣を身につけておくことが膝の老化の防止につながります。肥満を予防することによって、膝関節への負担を減らすことも重要です。その意味でも運動は効果的ですが、すでに膝が痛い方や、関節の病気がある方は、医師によく相談してから運動をするようにしてください。また、膝に限ることではありませんが、バランスのとれた食事をとることは、関節の軟骨への栄養供給を改善しますので関節老化の予防にもなります。生活習慣病の予防が膝の老化防止にもつながります。
(2012年10月号掲載)

肝臓の老化サイン

 身体の化学工場ともいえる肝臓は、本来は老化しにくい臓器です。
 食事からとった栄養素を身体が利用しやすいように変換したり、不要になった老廃物を身体に害が及ばないように分解したりと、肝臓は幅広い働きをする重要な臓器ですから、そう簡単に老化してもらっては困るのです。しかし、長年にわたって大活躍の肝臓も加齢にともなって機能が低下してくるのはやむを得ないことです。身体全体にもいえることですが、歳を重ねたら肝臓を労(いた)わることも必要です。
 肝臓の機能に大きく影響を与えるのは何といっても飲酒です。アルコールは肝臓で分解されますから、大量に飲酒するとそれだけ肝臓に負担がかかります。また、喫煙によって体内に取り込まれた微量物質の多くも肝臓で分解されますので、喫煙習慣を続けることは継続的に肝臓を傷めていることになります。脂肪や糖質は身体の維持に必要な栄養素ですが、過剰に摂取した場合、肝臓はそれらの物質を上手に利用するためにフル回転しなければなりません。肝臓にも負担がかかり、結果的に肝臓に脂肪が沈着し肝機能も低下し、肝臓の老化を促進することになります。大量飲酒、喫煙、オーバーカロリー、これら肝臓に負担をかけるような生活習慣を改めることが肝臓の老化防止、ひいては身体全体の健康維持につながります。生活習慣病を予防して肝臓も労わりましょう。
(2012年11月号掲載)

脳の老化サイン

 アガサ・クリスティの小説に出てくる探偵のポワロは「灰色(グレー)の脳細胞」を駆使して事件を解決します。なぜグレーなのかは諸説あります。脳のなかで、知的活動を担う組織が他の部分に比べて灰色がかって見えるからとも言われますが、本来健康な脳の組織は血流があるので綺麗なピンク色に見えます。加齢によって脳細胞は減少していくと考えられていますが、脳細胞がダメージを受けても、狭い範囲の障害であれば脳は障害部分の機能を修復するように神経回路を発達させ、結果として重篤な症状は現れません。しかし脳梗塞のように広範囲の血流が遮断されると、その領域の機能は大きく損なわれ、身体の一部が麻痺をしたり、場合によっては生命に危険が及ぶこともあります。
 普段から脳を働かせておくと神経回路が発達して、脳細胞の減少による機能の衰えを予防することができます。好奇心を旺盛にしていろいろなことに挑戦すると、脳の活動も活発になります。最近流行している脳をトレーニングするような計算も有効だと思われます。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は動脈硬化を引き起こし、脳の血流も悪くします。本来はピンク色の脳細胞が、本当に「灰色の脳細胞」になってしまいます。動脈硬化が進むと、脳梗塞や脳出血の危険も高まります。健康的な生活習慣を守ることが、脳の老化防止にも繋がります。
(2012年12月号掲載)

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