イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

夜空を眺めてみませんか(2)

国立天文台 特別客員研究員 宮内良子

青葉の季節の星空

 暑からず寒からず、しのぎやすい陽気です。南東の夜空を仰いでみましょう。頭上近くにひしゃくの形をした北斗七星が見えるでしょう。これはおおぐま座の星です。北斗七星の柄の部分のカーブをそのまま南に延ばしていくと、うしかい座のアルクトウルス(0等星)にぶつかり、この曲線をさらに南に延ばしていくと、おとめ座のスピカ(1等星)にあたり、これを「春の大曲線」と呼びます。そして、アルクトウルスとスピカを結び60度西にずらすと、しし座のデネボラにあたり、それらを結ぶと大きな三角形になります。さらに、北斗七星の方向に延ばすと、りょうけん座の一番明るい星コル・カロリ(3等星)にぶつかり、これを加えると大きなひし形になります。「春のダイヤモンド」と呼ばれています。おとめ座のすぐ南下に4つの3等星がゆがんだ4辺形を作っているのがからす座です。この頃の夜空には、大きい星座と小さな星座が混在しています。うみへび座(1位)、おとめ座(2位)、おおぐま座(3位)が堂々とある中、そのすき間にポンプ座、からす座、コップ座、やまねこ座、ろくぶんぎ座など、小さい星座がかわいらしく輝いています。少し夜空の暗い所に行くと大きな星座を頼りに見つけ出すことができます。また、スピカの西側少し上方には輪をもった土星が輝いています。アルクトウルスとスピカの明るさの中間の明るさです。
(2011年5月号掲載)

夏の終わりを告げる星空

 熱帯夜の続く眠れない夜、窓を開けて夏の星空を眺めてみましょう。
 夏の夜空は賑やかで、天頂付近にはひときわ明るく輝いている、こと座のベガがあり、そのベガを頂点とし、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイルの1等星で、夏の大三角形を作っています。
 南の空低く夏の星座の中でも最も美しい姿をした、さそり座が見えます。さそり座はS字型にカーブして、さそりの心臓あたりに赤く光っているのが1等星のアンタレスです。そのアンタレス星を中心に、十数個の星からなっています。赤い光を放つアンタレスは、まるで夏の夜空に浮かんだルビーのようです。アンタレスとは”火星に対抗するもの(アンチ・アーレス)”が語源です。
 天の川の一番濃いところにあるのがいて座で、さそり座が西に沈みかけるころ、代わって南の空低く陣取ります。いて座は私たち銀河系(天の川)の中心方向にある星座で、天文学の最先端で研究されている天体や、美しい星雲星団でいっぱいです。
 北の空にはW字のカシオペア座が見えます。この星座は日本からだと1年中見えますが、一番の見ごろは秋ですから、もう少したつと天頂近くまで昇っている姿が見えます。東の空にはペガスス座があり、ペガススの4辺形として秋の星座たちを引き連れて昇ってきます。
(2011年8月号掲載)

やさしいきらめきを味わう秋の星座

 西に沈みかけた「夏の大三角」や、東の空から昇り始めた美しく豪奢な冬の星座たちの間で、秋の星空は明るい星が少なく、ひっそりとしています。
 頭上には、2等星が1つ、3等星が3つで”ペガススの4辺形”を作っています。この4辺形は秋の星座を探す目印になります。まず、4辺形の右側の南北の1辺を南へまっすぐ3倍ほど延ばすと、明るさが少ない秋の星座たちの中で唯一の1等星・フォーマルハウトがひときわ輝いています。この星は、みなみのうお座の星です。4辺形の東側の2つの星のうち、北側の2等星はお隣のアンドロメダ座の星で、この星から北東にたどっていくと肉眼では淡い光の広がりが見えるでしょう。これが、アンドロメダ大星雲です。双眼鏡で見ると多くの星の集まりがわかります。このアンドロメダ座を北にたどっていくとWの形で知られるカシオペア座にあたります。カシオペア座を通り越すと北極星へたどりつきます。また、アンドロメダ座の東側では、8月には流星群で有名なペルセウス座を見ることができます。
 秋の星空には星座の案内役のペガススの4辺形をはじめ、アンドロメダ大星雲、ペルセウス座とくじら座にある変光星、そして多くの星団や銀河などたくさんあります。明るい星が少ないのですが、目を凝らし、じっくりと星たちのやさしいきらめきを味わってみてください。
(2011年11月号掲載)

冬の夜空のダイヤモンド

 冬は四季を通じて1等星より明るい星ぼしが一番多く輝く季節です。
 夏の天の川は雲が流れているような感じでしたが、冬の天の川は銀の砂を散らしたように見え、天球上を2等分するように流れています。防寒対策をして南の空を見上げてみましょう。全天一明るいおおいぬ座のシリウスが目に入ります。少し右上の方には1つの星が一列に並んでいます。それを囲んで上に2つ、下に2つの明るい星が光っています。この辺りがオリオン座で、3ツ星の右下にある1等星がリゲルです。3ツ星の左上にあるのがベテルギウスです。この星とシリウスとの長さを左のほうに延ばすと、こいぬ座のプロキオンにぶつかります。これを冬の大三角といいます。このベテルギウス辺りを中心にシリウスから1等星を時計回りにたどってみましょう。シリウス、プロキオン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ、おうし座のアルデバラン、そしてオリオン座のリゲルの順に。そうすると、ベテルギウスを丸く取り巻いて、大きな輝星の6角形が出来上がります。これを冬のダイヤモンドと呼んでいます。また、オリオン座の3ツ星の下には肉眼でもぼんやりと見える大星雲(M)、おうし座にはプレアデス星団、日本名すばる(M)もあり、視力の良い人は6つの星が見えます。『明月記(めいげつき)』にもある、かに星雲(M1)も、このおうし座にあります。
(2012年2月号掲載)

※ M番号はメシエカタログの番号。
  フランスの彗星探索家として有名なシャルル・メシエ(1730–1817)が、彗星とまぎらわしい天体をまとめてカタログにした

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