イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

食で“魚”を愉しむ(3)

古田優

野菜がたっぷり摂れる魚料理
 ①鮭と野菜の甘味噌蒸し煮

 鮭は鼻先の氷頭から内臓まで余さず食べられ、血流を整え生活習慣病を抑制するDHAやEPA、体内の過剰な酸化を防ぎガンや老化を抑制するアスタキサンチン、関節のクッションの役割を果たすコンドロイチン、ビタミンD・B6・B12などの栄養素を多く摂れる食材です。
 健康維持にはバランスの良い食事を摂る必要がありますが、野菜は1日の推奨量350gに対し、日本人の平均摂取量が300g以下と不足しています。そこで今回は、フライパンひとつでできて、野菜もたくさん摂れる鮭のメニューを紹介します。
 フライパンで、ニンニク少々(チューブ入りおろしにんにくで結構です)を油大さじ1に加え、生の鮭切身にまぶしながら火にかけて両面を炒めます。キャベツ、タマネギなどありあわせの野菜の千切りを鮭が見えなくなるくらい乗せて、隙間が少なくなるよう押しつけます。その上に味噌・酒・砂糖各大さじ1~1.5を混ぜたたれをかけ、蓋をして具材に火が通るまで10分程蒸し煮にして出来上がりです。
 蒸して柔らかくなった野菜と蒸し汁が鮭の隙間を埋め、上に乗った野菜が落し蓋の役割をしてくれるために、煮汁が少なくても鮭全体に味がまわります。水を加えないので素材の栄養を丸ごといただけますし、バターを乗せたり、刻みパセリをちらすといっそう美味しくなります。
(2012年11月号掲載)

野菜がたっぷり摂れる魚料理
 ②牡蠣の電子レンジ酒蒸し

 海のミルクと呼ばれる牡蠣(かき)は、日本人が不足しがちな亜鉛や鉄、疲労回復効果のあるグリコーゲン、肝機能を高めるタウリンなどを多く含みます。1月は旬の盛りで、肉厚になっておいしい時期を迎えます。
 そこで、電子レンジで簡単に作れる酒蒸しを紹介します。電子レンジ料理は端が乾燥して硬くなったり、通常の煮炊きに比べて味が劣る印象があるかもしれませんが、この方法ならば大丈夫です。牡蠣の蒸し汁を野菜に吸わせることで、不足しがちな野菜もおいしくたっぷり摂れます。
 作り方は、まず人参、白菜など季節の野菜を千切りにします。2人分だと120gほどです。これに昆布の細切りと舞茸などきのこ類をほぐしたものを各10gほど混ぜ、耐熱性の皿に入れます。牡蠣は、8粒ほどを水カップ1に大さじ1の塩を溶かした塩水で洗った後、同様の塩水に5分ほど漬け、水気を切って野菜の上に乗せます。この上にキッチンペーパーを端が皿からはみ出さないように押し込みながらかけ、まんべんなく濡れるように酒を振りかけます。これにラップをふんわりとかけ、600Wなら5分ほど電子レンジで加熱します。
 この方法は、あさりを乗せて塩を振ったり、塩を振ったホタテや魚の切身、鯛の兜(かぶと)を乗せてもできて、酒をワインに替えると洋風にもなります。体も温まりますので、ぜひお試しください。
(2013年1月号掲載)

野菜がたっぷり摂れる魚料理
 ③海苔を使った手軽な魚の煮付け方

 日本人は海の幸に恵まれ魚とともに暮らしてきたので、普段食べている煮魚にも美味しくするための工夫が重ねられてきました。煮魚は本来、隙間なく鍋に魚を並べ、落し蓋をして少ない煮汁で魚の上面まで短い時間で煮上げるものです。しかし、近年家族の人数が減って1、2切れを煮なければならないことが増えたために、鍋の中の隙間が多くなり煮汁が上がりにくく、これまでの煮方では美味しく仕上がらなくなっているようです。そこで、少量でも上手にできる煮魚の作り方を紹介します。
 1人前として切り身なら1切れを、1匹丸ごとの魚なら、うろこ、えら、わたを取ったものを用意します。フライパンにおろしニンニクと油を少々入れて魚の両面を軽く炒めた後、醤油、酒、砂糖を各大さじ1.5とおろし生姜少々を合わせたたれの半量をかけます。板海苔2分の1枚のざらついた面を上にして魚を包むように乗せて少し柔らかくなるのを待ち、残りのたれを海苔に吸わせながらかけます。次にフライパンに蓋をして10分ほど弱火〜中火で蒸し煮にします。こうすると海苔の風味も加わりとても美味しくなります。海苔は浅炊きの佃煮のように食べられ、たれを味噌だれや焼き肉のたれ、トマトソースに替えればいろいろな味が楽しめます。野菜を魚の周りに入れて一緒に蒸せば、野菜もたっぷり摂れます。
(2013年3月号掲載)

日本の家庭事情と魚料理

 近年、食生活の変化とともに魚料理が食卓にのぼる回数も減っているようです。加工食品は伸びているものの魚の消費は毎年減り続け、ある調査によると、2000年に1人1日平均92g食べ、1世帯当たり週6.8回魚料理が食卓に並んでいたのが、2010年には72.5g、5.4回に減りました。また以前は年を取ると魚料理を好む傾向がありましたが、今は必ずしもそうではなくなりました。そして、パスタや丼のような、1皿で主食・主菜(肉や魚)・副菜(野菜)が摂れる料理が増えています。
 伝統的な魚料理が現代の生活に合わなくなってきているのは残念ですが、一方で初夏は鶏魚(いさき)や鯵(あじ)が旬を迎えます。
 そこで、簡単な焼き魚の作り方をご紹介します。1匹丸ごとの魚に多めの塩をまぶし、5分後に水洗いして魚臭さを取ります。料理バサミで鰓(えら)があごの付け根に繋がった部分を切り、腹を開いて鰓を持って引き出すと、内臓も繋がって取り出せて血や汚物が出にくいです。このゴミに多めの塩をまぶすと腐りにくくなります。腹の中をよく洗い、適量の塩を振り室温で30分後、酒3に対し酢1を混ぜたものにさっと浸し、皮に少々の塩を振り味にアクセントをつけ、テフロンのフライパンで両面を焼きます。一緒に野菜を焼けば、温野菜もできます。
(2013年6月号掲載)

旬の鯖を食べましょう

 本州南岸で春〜夏の産卵を終えた鯖は、次の産卵に備えて餌の豊富な北日本に移動し、10月には北海道東沖に達します。その後南下しますが、このときは一番栄養を蓄えた状態で脂が最も乗っており、「秋鯖嫁に食わすな」という諺(ことわざ)が生まれるほど、人にあげたくなくなる美味しい魚になっています。どのように料理しても美味しいのですが、まずは魚そのものの味が味わえる塩焼きをおすすめします。
 しかし、脂の乗った鯖を魚焼きグリルで焼くと油汚れがひどく、片づけが大変です。そこでフライパンで焼く方法を紹介します。(1)鯖の切り身をカップ1の水に大さじ1弱の割合で溶かした塩水に3分程浸し、水を切り10分程室温に置きます。(2)大さじ1.5の酒に大さじ0.5の酢を混ぜたものに浸します。(3)少々の塩(指2本で摘む量)を皮面に振り、油を引いたフライパンで皮面から両面焼き付け、蓋をして中〜弱火で5分程蒸して火を通します。(4)蓋を取り、溜った水を拭き、両面を焼き付けてカリッとさせるとなお良いです。塩は味のアクセントになり、日本酒の糖分が焼き目を付け、酢は皮がふやけるのを防ぎます。
 ほかにも味噌煮、ムニエル、トマト煮、しめ鯖も美味ですが、内臓や腹須(はらす)に渦巻状になってついているアニサキスという2cm程の糸状の寄生虫がいたら、腹痛を起すことがあるので十分に加熱調理してください。
(2013年10月号掲載)

※ 内蔵を囲む腹の部位

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