イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

野菜を美味しく食べて健康に(2)

管理栄養士・野菜ソムリエプロ 篠原絵里佳

食卓を華やかにする人参

 人参は秋から冬に旬を迎え、寒くなるほど甘みが増します。旬の人参は、砂糖をいつもよりも少なめにすることで、素材の甘みを活かして調理することができます。
 人参は品種も多く、お節料理に登場する金時人参は濃い紅色をしており、沖縄で栽培されている島人参は黄色、そのほか紫色や白色の人参もあり、豊かな彩りで食卓を華やかにしてくれます。
 栄養価の高い人参ですが、特筆すべきはカロテンです。カロテンという名前は「キャロット」に由来しているほど、豊富に含まれています。葉も栄養価が高く、同様にカロテンが豊富です。カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変わります。ビタミンAはたんぱく質とともに粘膜を作るので、皮膚や目・鼻・喉などの粘膜を丈夫に健康に保ってくれます。乾燥している冬にこそ、人参を食べれば風邪やインフルエンザなどの感染症の予防効果が期待できます。
 カロテンは脂溶性のため、きんぴらのように油で炒めたりかき揚げにするなど、油脂と一緒に摂ると吸収がよくなります。サラダや炒めもの、煮もの、焼きものなど、さまざまな調理法で食べることができて味わいも異なるため、お好みの調理法を見つけてみるのもよいですね。ピューレ状にすれば、ムースやケーキなどの菓子にも利用できます。
(2023年1月号掲載)

甘くて美味しい旬のほうれん草

 1年を通じて出回っているほうれん草ですが、旬は11~3月頃。3月は、旬の名残を楽しむ時季です。旬のほうれん草は甘みが増しますが、それは寒さに当たっても凍ることがないよう細胞に糖を蓄えるためです。また、寒さに当たるとえぐみの原因となっているシュウ酸が増えにくいため、ほうれん草特有のえぐみが苦手な人でも美味しくいただくことができます。
 甘くてえぐみの少ない旬のほうれん草は、シンプルにお浸しにして食べるのもお勧めですし、シュウ酸が少ないので、茹でずにそのまま炒めて食べることもできます。甘みが強くなっているため、砂糖の使用量を極力控えると、ほうれん草が持つ自然の甘みが活かされます。
 ほうれん草の根っこをよく見ると、赤く色づいていることに気づかれると思います。これはポリフェノールの一種のベタシアニンという色素成分で、抗酸化作用が期待されています。また、根っこがふっくらとしていると甘みが強いという特徴もありますので、根っこまで捨てずにいただきましょう。
 旬のほうれん草は栄養価も高く、そうではない季節と比べてビタミンCは3倍も含まれています。ビタミンCは水に溶けやすい性質があるため、たっぷりのお湯で短時間にサッと茹でると損失が少なくなります。
(2023年3月号掲載)

アスパラガスの楽しみ方

 春は、国産のアスパラガスが美味しくなる季節です。本州から九州は4~5月、暖かくなるのが遅い北海道では6~7月が美味しく、産地リレーをしながら、長い期間楽しむことができます。
 日本ではグリーンアスパラガスが主流ですが、ヨーロッパではアスパラガスといえばホワイトアスパラガスだそうです。どちらも同じアスパラガスなのですが、栽培方法が異なっており、グリーンアスパラガスは日光を浴びながら育ち、ホワイトアスパラガスは土の中や遮光シートの暗闇の中で光に当てないようにして育てます。ホワイトアスパラガスは収穫量が少なく、出回る時期がとても短いので、目にしたときにはぜひ食べてみてください。食感が軟らかく、ほんのりとした甘みがあり、アスパラガス特有の青臭さがありません。茹でたり炒めたりすると美味しいですが、生でも美味しくいただけます。グリーンアスパラガスは、やや青臭さがありますが、栄養価が高いのが特長で、抗酸化作用に優れたカロテンが豊富です。油で炒めれば、カロテンの吸収も良くなります。
 ところで、紫色のアスパラガスがあるのをご存じでしょうか。これは品種の違いによるものです。軟らかく、甘みが強いのが特長です。茹でたり炒めたりすると色が抜けてしまうため、生でいただくのがお勧めです。スライスしてサラダに加えると、彩り豊かになります。
(2023年5月号掲載)

食卓を彩る「トウモロコシ」

 7月に出荷の最盛期を迎えるトウモロコシには、ポップコーンの原料になる爆裂種、コーンスターチなどのでんぷんになる馬歯種、メキシコ料理のトルティーヤに使われている硬粒種、観賞用のポッドコーンなど、さまざまな品種がありますが、私たちに最も馴染み深いのはスイートコーン(甘味種)でしょう。スイートコーンは、カラフルな色で食卓に彩りを添えてくれます。濃い黄色の黄粒種、白色の白粒種、黄と白のバイカラー種、赤い色の赤粒種といったさまざまな色の種類があり、味わいもそれぞれ個性があります。最も甘みが強いとされているバイカラー種は、現在の日本のトウモロコシの主流になっています。白粒種は粒皮が軟らかく甘みも強いので、生のままでも美味しくいただけます。トウモロコシは鮮度低下が早く、収穫された時点から急速に糖分がでんぷんに変化し、甘みが薄れてしまうため、加熱するまで皮を剥かずに、できるだけ早く食べるのが美味しくいただく秘訣です。採れたては栄養価も高いです。
 トウモロコシは、昼夜の寒暖差が大きいほうが美味しくなるといわれています。4月頃から九州での出荷が始まり、東北や北海道では8月中旬~9月中旬頃と、徐々に北上する産地リレーで長い期間楽しむことができます。
(2023年7月号掲載)

味わい豊かなナス

 ナスは1年を通して収穫されますが、初夏から秋に旬を迎えます。
 ナスは品種が非常に多く、それぞれに特徴があります。多くの産地で栽培されているのは「長卵形なす(中長なす)」や「長なす」です。そのほか、大きい「米なす」や非常に長い「大長なす」、特産品として知られる丸型の「加茂なす」や水分・甘みが豊富な「水なす」、また白色や緑色、ゼブラ柄など色や見た目もさまざまで、味わいもそれぞれ特徴があります。
 夏に収穫されるナスは、強い日差しを浴びて生長するため、皮が厚くて種が多く、果肉が詰まっています。一方、秋に収穫されるナスは「秋なす」と呼ばれ、昼夜の寒暖差が大きく、柔らかい日差しの中で生長するため、皮が薄くて柔らかく、みずみずしいのが特徴です。「秋なすは嫁に食わすな」ということわざがあるほど美味しいです。
 ナスは焼く、揚げる、炒める、茹でる、生とどんな調理法でも美味しくいただけます。夏のナスは水分が少なく、ソースや出汁が薄まらずに美味しく仕上げることができます。加熱しても煮崩れしにくいため、長時間の煮込み料理にもお勧めです。秋なすは、すぐに火が通るので、サッと炒めたり、焼きナスや天ぷら、浅漬けに向いています。夏が旬の水なすは柔らかく、生で美味しくいただくことができます。季節によって異なる味わいを楽しみましょう。
(2023年9月号掲載)

寒い冬は、ほうれん草で健康に

 年間を通して流通しているほうれん草ですが、旬は11月~1月です。「寒さに当たると甘みが増す」といわれ、寒さから自分の身を守るために水分を減らして糖分を増やすので、寒くなるほど甘みがのってきます。この性質を活かしたほうれん草が「寒じめ」です。一般的なほうれん草の糖度は5度前後ですが、寒じめになると糖度が10度を超えることもあり、果物と同等の甘みを有します。ほうれん草特有のえぐみも少なくなるため、寒じめや寒い時期のほうれん草は、えぐみが苦手な方でも、美味しく食べることができます。
 旬のほうれん草は美味しいだけでなく、栄養価にも優れています。旬でないときと比べると、ビタミンCは3倍の含有量になります。粘膜を健康に保つ効果のあるビタミンA(カロテン)も豊富に含まれ、ビタミンCとの相乗効果で免疫力を高める効果が期待できます。さらに鉄や葉酸が豊富で、貧血を予防し、血行を促す働きがあることから、体を冷えから守る効果も期待できます。
 鉄の吸収を阻害したり、体内でカルシウムと結合すると結石の原因となるシュウ酸は、茹でたり水にさらすことで除去することができます。水溶性のビタミンCをしっかり残すためにも、たっぷりのお湯でサッと短時間で茹でることがポイントです。
(2023年11月号掲載)

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