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COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

古くて新しい感染症「結核」

公益財団法人 東京都結核予防会 理事長 櫻山豊夫

結核は昔の病気ではない

 結核は、かつては国民病といわれるほど蔓延(まんえん)していましたが、有効な治療薬が開発され予防活動も活発に行われて患者数も減少したことから、ともすると過去の病気と考えられがちです。しかし現在でも国内で年間2万人弱の方が結核を発病し、2000人弱の方が結核で亡くなっています。世界的には総人口の約4分の1が結核に感染しており、重大な感染症であることに変わりはありません。
 結核は、結核菌によって主に肺に炎症が起こる病気です(肺結核)。患者さんの咳やくしゃみの飛沫の中に含まれる結核菌が空気中に飛散・浮遊し、それを周りの人が吸い込むことで感染していきます(空気感染)。
 感染しても多くの場合、身体の免疫の力で結核菌は抑え込まれて休眠状態になり発病しませんが、1、2割の人は結核菌が免疫に勝って、感染後半年から2年間くらいして発病してしまいます。発病すると咳や痰の症状が現れ、X線写真で肺に影が見られるようになります。
 一方、免疫力で休眠状態になった結核菌が感染後数年から数十年たって、加齢や病気などで免疫力が低下したときに、勢いを盛り返して発病することもあります。これを既感染発病といいますが、高齢になって既感染発病する方の割合が多いことと、結核の多い国で生まれ育った外国出生患者が増加していることが、現在の日本の結核の特徴です。
(2019年1月号掲載)

結核を予防するために

 結核菌は患者さんの痰(たん)に多く含まれていますので、感染を予防するには患者さんの咳やくしゃみで排出される結核菌を吸い込まないことですが、空気感染する結核は通常のマスクでは完全にはシャットアウトすることができません。咳やくしゃみの出る患者さんがマスクをつけて、しぶき(飛沫)が周辺に広まらないようにすることが感染予防に有効です。しぶきの拡散は、通常のマスクで十分防ぐことができます。また、医療従事者などは、N95タイプという特殊なマスクを着用して結核菌を吸い込むことを防止しています。
 十分な睡眠、バランスのとれた食事など、健康的な生活を送って身体の免疫力を高めておくことも結核の感染や発病を予防するために重要です。生活習慣病、特に糖尿病では免疫力が低下して結核発病のリスク要因になることが知られています。
 定期的に健康診断を受けることは、自分自身の結核を早期発見するためにも必要です。早期に発見することで、周りの人への結核感染も予防できます。咳や痰などの症状が長く続くときは、受診して検査を受けることも早期発見につながります。
 予防ワクチンであるBCGは、抵抗力の弱い乳児が結核になったときに重症化を予防する効果があります。忘れずに受けましょう。
(2019年2月号掲載)

結核の治療方法

 3月24日は「世界結核デー」です。結核は慢性感染症ですので、治療期間も長くかかります。中途半端な治療では、よくなったと思っても再発することがありますし、結核菌が治療薬に対して抵抗力を獲得した耐性結核菌を増やすことにもなります。耐性になるのを防ぐために、複数の抗結核薬が投与されます。
 かつては2年から3年の治療期間が必要でしたが、現在ではより強力な治療薬が開発されており、リファンピシンとピラジナミドという薬を含む4剤で6か月間治療するのが標準になっています。薬の服用が不規則になって耐性結核菌ができるのを防ぐために、DOTS(ドッツ)※ という方式も採用されています。これは看護師などが、患者さんが服薬しているのを直接確認することによって薬の飲み忘れなどを防ぐ方法です。また治療期間が長いので、経済的負担を軽減するために感染症法に基づいた医療費の公費負担もあります。最寄りの保健所に相談してください。
 世界的には耐性結核菌が増えている地域もあります。複数の薬に耐性を獲得している結核菌もあり、注意が必要です。多くの抗結核薬に耐性をもつ多剤耐性結核では、有効な薬を慎重に選ぶ必要があります。近年、有効な薬剤が選択できない多剤耐性結核に対する新しい抗結核薬(デラマニド、ベタキリンなど)も開発されています。
(2019年3月号掲載)

※ Directly Observed Treatment, Short–course(直接服薬確認療法)

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