イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

乳製品の魅力と健康

管理栄養士・ミルク料理研究家 奥泉明子

牛乳を飲んで応援!自分や家族、そして酪農家さんも

 牛乳を飲む習慣はありますか?牛乳にはカルシウムが多く含まれ、子どもたちの成長や骨粗しょう症の予防に役立つことが広く知られています。また、牛乳のたんぱく質は筋肉の増強にも役立ち、アスリートには欠かせない栄養です。
 福岡県の久山町で行われた疫学調査研究による知見が、注目されています。「牛乳や乳製品を摂っている高齢者は認知症の発症が少なかった」、「認知症の発症リスクを減らせる」というものです。加えて国内外の研究では、牛乳を習慣的に飲んでいる人は心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクが低いことも示されています。健康寿命を延ばし、日々の生活を楽しむためにも牛乳を食生活に取り入れましょう。苦手な人は、ヨーグルトやチーズでも牛乳と同様の栄養が摂れます。
 現在、酪農家は世界情勢の影響を強く受け、生産コストの上昇、特にエサの高騰が大きな打撃となっています。20年前の倍の飼料代がかかっており、さらに円安が進んで値上がりが続き、廃業するところも増えています。牛乳の消費そのものは連続5年伸びていますが、春休みなど長期の休みになると需要の1割にあたる学校給食がなくなり、生乳が余る恐れがあります。飲むだけではなく、料理やお菓子作りなどに使って牛乳消費を増やし、酪農家の皆さんを応援しましょう。
(2023年3月号掲載)

楽しみながら健康増進できるヨーグルト

 毎日食べたり飲んだりする、お気に入りのヨーグルトはありますか。
 ヨーグルトは、厚生労働省令※ により「種類別:発酵乳」と表示され、成分規格は「乳酸菌数が1ml中に1000万以上」と定められています。賞味期限まで品質を保つため、実際には10倍以上の菌数が含まれているといわれ、100g食べると100億もの乳酸菌を摂取することになります。また、たんぱく質やカルシウムは牛乳と同等、もしくは1~2割多く含まれています。乳酸菌がお腹の調子を整えるほか、腸管の免疫機構に作用し、感染症予防や抗腫瘍効果なども認められています。生活習慣病や認知症の予防など、健康維持・増進を目的とする機能性表示食品が続々と増え、特定保健用食品(トクホ)のマークがついたヨーグルトもあります。
 近年、のむヨーグルトは、飲み切りタイプでさまざまな機能性をうたったものが人気です。固まったもの(カード)を工場のタンクでかき混ぜて液状にしており、薄めていません。甘みがあっても低脂肪なものが多く、牛乳と同じくらいのエネルギーとなっています。
 プレーンヨーグルトにフルーツやナッツ類、シリアルなどを加え、ビタミンCや食物繊維をプラスするのもお勧めです。いろいろなヨーグルトを楽しく食べて、お気に入りを見つけ、毎日欠かさず摂りましょう。
(2023年9月号掲載)

※ 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令

チーズを多彩に活用~チーズの沼にはまってみては

 チーズには、乳酸菌の力で熟成が進む「ナチュラルチーズ」と、1~数種類のナチュラルチーズを粉砕し溶かして乳化剤を加え、発酵を止めた「プロセスチーズ」があります。プロセスチーズは日本で独自の発展を遂げ、多種多様なものが製造されています。ナチュラルチーズは、紀元前から作られている最も古い加工食品といわれ、世界中に1000種類以上あるとされています。
 ナチュラルチーズは大手乳業メーカーも製造していますが、注目は全国に360か所を数えるチーズ工房製のものです。チーズ工房の半数は酪農の盛んな北海道ですが、すべての都道府県にあり、日本ならではの食材と組み合わせたり、出来立てのチーズが味わえたり、個性的なチーズが作られています。チーズ専門店での扱いも増え、デパートの催事やオンラインショップ、道の駅での販売など入手方法も多様になっています。旅行に出かけたときはぜひチーズ工房を探してみてください。
 そのままでも美味しく、パーティーでは数種類のチーズをカットしてナッツやドライフルーツなどと盛り合わせたチーズプラトーにすると食卓が華やかになります。一方、料理の食材として溶かしたり、焦げ目を付けるとまったく違った味わいになります。牛乳製だけでなくヤギ乳や羊乳、水牛乳製も国内で作られています。奥の深い食品です。
(2023年11月号掲載)

New–Washoku 乳和食のすすめ

 30年にわたり牛乳やヨーグルト、チーズ、バター、スキムミルクなどの乳製品を主に和食で、意外性のある使い方を提案・普及しています。
 和食はヘルシーといわれますが、食塩相当量は多くなりがちです。日本人の3人に1人は高血圧といわれていますが、牛乳に含まれるカルシウムやカリウムがナトリウムを体外に排出し、血圧を下げてくれます。そこでご紹介するのは、10年前に始まった乳和食です。成分無調整の牛乳に、味噌や醤油、めんつゆなどを組み合わせることで、和食でありながら、牛乳のコクや旨味によって、食塩の量を減らすことができる料理で、一般社団法人Jミルクのホームページにレシピや作り方の動画が紹介されています。納豆に牛乳、味噌汁に牛乳など聞いただけでは驚きの使い方ですが、作ってみると美味しいです。ミルクもちなど簡単に作れるデザートもあります。減塩の効果が認められ、学校や病院の給食、介護食などにも取り入れられています。
 牛乳と調味料の組み合わせのほかに、牛乳を温めて酢を加え、カッテージチーズ(風)とホエーに分離させ活用する調理法もあります。牛乳をそのまま使うと出来上がりが白くなりがちですが、見た目も通常の和食と変わらない、新しい= New–Washoku が完成します。ぜひ一度作ってみてください。美味しく減塩を実践しましょう。
(2024年1月号掲載)

スキムミルクを活用しましょう

 スキムミルクは脱脂粉乳とも呼ばれ、ヨーグルトやパンの原材料として欠かせない身近な乳製品です。溶けやすくするため顆粒状に加工され、アルミパウチのチャック付きスタンドパックや、扱いに便利な個包装のスティックで販売されています。
 牛乳から水分と脂肪分を除いているので、摂りたい栄養が詰まっており、大さじ3杯(約18g)で牛乳200mlとほぼ同量のたんぱく質やカルシウムが摂れます。骨粗しょう症予防や筋力アップにお勧めです。水や湯に溶かして飲むとあっさりしていますが、料理に加えると牛乳の美味しさ、コクを加えることができますので、普段の料理に入れてみるのも良いと思います。小麦粉を使った「粉もの」料理やひき肉料理、ポテトサラダなどに加えたり、厚焼き玉子を焼くときに振り入れながら巻くと、手軽にたんぱく質やカルシウムがアップできます。炒めものやスープ、ドリンクなどにも使えます。カレーやシチューなど熱いところに加えると固まってしまうことがあるので、煮汁を取り出して溶かすとダマになりません。牛乳と異なり、かさを増やさず、料理も白くならないという利点もあります。買いものの際に軽量なのも嬉しいところです。冷蔵庫に入れると、出し入れの際に結露し固まってしまいますので、開封後も常温で保存しましょう。
(2024年3月号掲載)

牧場へ出かけてみませんか?

 牛乳は工場で製造されるので、工業製品と思っている人がいるそうですが、生きものである乳牛が出してくれる畜産物です。乳牛は暑さに弱いため、牧場では扇風機やミストなどで暑熱対策をしています。それでも乳量が落ち、乳成分も冬の寒い時期に比べると低くなります。
 牧場にいるのはメスの牛です。ヒトと同じ哺乳類なので、子牛を産まないと乳は出ません。日本の乳牛は99%が白黒のホルスタイン種ですが、アイスクリームやチーズに加工すると美味しいジャージーやブラウンスイスなどが飼われていることもあります。一般社団法人中央酪農会議のホームページでは、酪農や乳製品づくりの体験などができる各地の牧場を紹介しています。酪農家の仕事を理解し、乳牛の大きさを体感し、餌の種類や量、搾乳の様子、乳量などを知ることができ、アニマルウェルフェア(動物福祉)や環境問題、SDGsの取組みなどを学ぶ機会にもなります。防疫の観点から立入禁止の牧場もありますので、確認をしてからお出かけください。
 酪農についてより知ることで、牛乳・乳製品をもっと好きになってもらえたら嬉しいです。そして子どもたちにとって楽しい夏休みは給食がありません。成長に大切なカルシウムが不足しないよう、ご家庭でも毎日摂る習慣をつけてほしいです。
(2024年7月号掲載)

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