イカリホールディングス株式会社 よりそい、つよく、ささえる。/環文研(Kanbunken)

COLUMN

- コラム

「月刊クリンネス」に掲載された
過去の連載コラムの中から、
テーマ別に選りすぐりの記事をご紹介します。
(執筆者や本文の情報は執筆時のものです)

お客様の幅広い食習慣に寄り添った機内食

株式会社ANAケータリングサービス 食の安全品質保証部 上村典子

アレルギーに配慮した食の導入経緯

 海外旅行で不安やトラブルなく過ごし、旅行を楽しんで日本に帰国したいのは誰でも同じです。そして食事は、旅のひとつの思い出となります。
 「ほかの子と同じように、機内食体験を実現させたい」という食物アレルギーの子を持つ親の会からの積極的な働きかけがアレルギーミールのきっかけとなり、すでに提供開始から15年以上が過ぎています。機内食工場は多種多様なメニューを取り扱うため、アレルゲンは至る所に存在します。開発担当のシェフたちと一緒に都内の自然食品メーカーを多数訪ね、他工場のアレルゲン管理の例を参考にしました。有機野菜農園を巡り、体によい食材を探し、医療関係者・親の会の方々のアドバイスも参考にしながら、米粉やてんさい糖の食材を使って栄養価のあるメニューになるよう、シェフたちは幾度も検討を重ねました。最終的には我々がメニュー監修を行い、製造は信頼できる専門会社へ委託することが決まり、現在に至っては乳幼児向け28品目アレルギー対応食・お子様向け7品目アレルギー対応食を揃えています。
 「あの時の機内食は美味しかった」、「僕も(私も)ほかの人と同じ食事を食べられた」と、心躍る思い出や感動を子どもたちの記憶に残すことができればと思います。メニュー作りはお客様の視点に立って考える原点になりました。
(2023年7月号掲載)

機内食とSDGs

「サステナブル」は、一般的にも馴染みのある言葉として根付いてきました。
 SDGsは我々に最も身近な食生活にも広がっており、最近では肉に似た植物性由来の代替食材が手軽に手に入るようになりました。機内食においても、お客様の多様化する食の期待に応えるべく、おからとコンニャクから作られた食物繊維が豊富なカツ丼を登場させました。日本の伝統食材をベースとして開発したこのメニューは、海外の方に和の食材に興味を持っていただく契機にもなっていると考えます。また、動物愛護が根幹のヴィーガン(完全菜食主義者)は、サステナブル社会を生きる象徴としてSDGsの追い風になっています。これらの状況を受け、ヴィーガン対応のメニューを刷新し、加えて昨年12月、もともと機内で好評だった豚骨ラーメンについて、動物性由来成分を使用せず、プラントベースのみでその味わいを実現しました。
 SDGs目標12の「つくる責任・つかう責任」を推進する中で、魅力的なメニューを提供するのはもちろん、食事を通じてお客様と価値観を共有できることが大切です。親近感を持って美味しく食べていただくことで、生産と消費のバランスも整います。循環型社会実現のために、皆が主人公として参画するという意識を持つことが重要だと思います。
(2023年8月号掲載)

宗教食~ハラールミールの製造現場から

 イスラム教徒(ムスリム)は、世界で16億人いるともいわれています。観光客が戻りつつあり国際化が進む中、エスニック系の食材販売店やレストランも増えていますが、数は多くありません。
 ハラールは「許されているもの」、ハラムは「不浄で禁じられているもの」を指し、ハラムフードを食べることは神に背く行為です。イスラム教徒は豚肉とアルコール(酒)を口にしてはならず、豚から派生した食品(ゼラチンなど)や豚と接触した食品も禁忌とされています。牛や鶏の肉は、ハラールの戒律に従って処理されたものを使います。
 私たちがハラールミールを機内食工場で製造する際、衛生上守るべきルールがあります。原料搬入時に、ハラムからハラールを「区分」する保管場所を準備します。ハラール専用の器具や道具を用意し、殺菌や洗浄を行ってから使うことが原則です。日本流に言うと「お清め」に該当すると思います。ハラールミールは日本ではまだまだ馴染みが薄く、その教えも窮屈に感じがちですが、これらを実践することは、ほかのメニュー製造における食中毒事故の防止や、アレルギー管理にも応用できるという利点もあります。「選ばれた食材を使って清潔に調理されたアジア系の食事」がハラールミールですので、もっと身近に感じてもらいたい注目度の高い食事です。
(2023年9月号掲載)

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