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2024

北アメリカ大陸に侵入したオオスズメバチ

 オオスズメバチはハチの中でも大型で、人が刺されると死亡するリスクがあります。筆者自身も数年前にクヌギ林で働きバチに刺され、アナフィラキシーショックを起こして九死に一生を得た経験があります。このスズメバチは日本以外に、中国、東南アジア、インドにも分布しています。ほかの昆虫を捕食して害虫駆除に貢献してくれる一方で、セイヨウミツバチを襲って幼虫、蛹、そして成虫を捕食し、数時間のうちに巣を全滅させてしまう恐ろしい昆虫です。興味深いことに、在来種であるニホンミツバチは彼らを撃退する術をもっており、全滅してしまうようなことはないようです。
 そのオオスズメバチが、2019年12月に北米ワシントン州で初めて発見されました。翌年の夏から秋にも成虫が目撃され、どうやら繁殖していたようです。秋には、捕獲した成虫に無線タグを取りつけ、巣のありかを特定し、駆除に成功しました。侵入経路は不明のようですが、荷物にまぎれて女王バチが輸送されてきたのかもしれません。2020年には、別の遺伝子型をもった成虫がカナダで捕獲されています。体が大きく、鋭い大あごと毒針をもつ殺人スズメバチとして、メディアでも大きく報道されました。北米とカナダではセイヨウミツバチが広く飼われていることから、警戒が高まっているようです※。

※  ニューズウイーク日本語版(2020.11.05)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-94921.php

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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