- 日替わりコラム
Fri
3/26
2021
アニサキス食中毒は、寄生虫(線虫)の1種であるアニサキスの幼虫が寄生しているサバ、アジ、サンマなどの生鮮魚介類を介して胃壁などに刺入(しにゅう)して起こる、激烈な痛みを伴う食中毒です。治療は、内視鏡により虫体を取り出します。令和元年には全国で食中毒事件数328件、患者数336人が報告されていますが、事件数としては、生肉などによるカンピロバクター、冬場のノロウイルスを抜き第1位となっています。届出がされない症例も多く、診療報酬のデータから年間7000人程度の患者がいると推計する研究者もいます。
ところで、アニサキスはアレルギー反応の原因(アレルゲン)となることが知られています。アニサキスによるアレルギー反応の症例は少ないとはいえ、急激な血圧低下や呼吸不全などの重篤なアナフィラキシーショックを起こすこともあります。一度アナフィラキシーショックを起こした人がアニサキスが寄生している魚介類を食べると、再び発症する可能性が非常に高くなります。また、死んだアニサキスやアニサキスの分泌物によってもアレルギー反応が起こることが知られ、魚介類を原料とした出汁やエキス、ソースなどにも注意が必要です。このため、アニサキスアレルギーの人は、少量でも魚介類を食べることを避け、エピペン(自己注射)を常時携帯するなど、非常時に備えています。
東京食品技術研究所 学術顧問鈴木達夫
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