- 日替わりコラム
Tue
5/4
2021
六波羅蜜の2番目は、「持戒波羅蜜」です。持戒とは、「戒を持(たも)つ」ことで、私たちが生きていく上で、守るべき大切な生活の規律を保持することを意味します。法律も同じような意味で、仏法(ぶっぽう)(仏さまの法(おしえ))のもとに生きる上で、守るべき戒律(かいりつ)(生活の規律)がその語源です。
子どもの頃、親や先生から「命を奪ってはいけません(不殺生(ふせっしょう)戒)」、「他人のものを盗ってはいけません(不偸盗(ふちゅうとう)戒)」、「嘘をついてはいけません(不妄語(ふもうご)戒)」など、様々なことを教わりましたが、物心のついた子どもたちに、おそらく大人が初めて教えるであろう大切な人の心が、仏法における戒律なのです。
戒律は、守るためにあるわけですが、実は、破るためにあるとも言われます。なぜならば、私たち人間は、戒律を破らなくては生きていけない存在だからです。私たちが生きるためには、毎日、殺生や偸盗、妄語を犯さなければなりません。あらゆる生物から命をいただき、大地からは生活の基盤となる土地を借り、水や空気など自然の恩恵に与(あずか)り、人間社会の中では、それぞれの関係性を保つため、言葉を繕わなければなりません。だからこそ人間は、毎日の生活の中で「戒を持つ」ことが大切なのです。まずは、私たち大人が、これからの時代を生きる子どもたちに、恥じない生き方をしたいものです。
合掌
下野薬師寺別院 舎那殿壇 龍興寺 副住職阿波建多
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