- 日替わりコラム
Mon
6/21
2021
哲学者のハンス・ゲオルク・ガーダマーは、人間は「先入見」という経験や環境によって形成された世界観のようなものに基づいて、理解や解釈を行っていると述べています。
「先入観」という言葉はよく聞きますが、こちらが「良くない影響を与える固定概念」を示しているのに対して、「先入見」は否定的な面だけではなく肯定的な面も含んで使われることが多いようです。
現在、コロナ禍で、かつてないスピードでさまざまな変化が起きています。私たちも今後、食に関わる未経験の事柄と数多く向き合うことになるかもしれません。
さらにガーダマーは、人間は未経験の事柄に出会ったときにも、そのことをきっかけとして向上し得る能力を備えていることを「地平融合」というたとえによって示唆しています。人間は未知のものに出会ったとき、今持っている先入見をすべて捨て去るべきだということではありません。ガーダマーは「自分が現在いる地平」と「未知のものが属している地平」が一層大きなスケールで融合して、「新しい地平」が創造されると述べました。
脳裏に浮かんでくるその壮大な光景は、そのような大きな力が人間には備わっていることを信じさせてくれます。
リテールHACCP研究所山森純子
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス