- 日替わりコラム
Mon
7/19
2021
ある消費者が、約1年前にスーパーで購入したボトル入り赤ワインを開封しようとして、ワインの退色に気づきました。ワインメーカーに連絡すると苦情品の送付を依頼されましたが、現品を送ることで異常の原因が曖昧になることを危惧した消費者は保健所に届け出ました。
苦情品の入った緑色のガラス瓶にはネジ式の蓋がむき出しの状態で使用されていましたが、当該スーパー取扱品の蓋部分はすべてシュリンク包装※ になっていました。また、苦情品の内容液は明らかに赤ワインとは異なる琥珀色で果実臭があり、糖度50%以上の粘性のある液体でした。
これらの調査結果を届出者に伝えるとともに、ワインの空き瓶の再利用の有無について問い直しました。すると、同居の家族が1年前の夏に自宅の庭で取れた梅でジュースをつくり、ワインの空き瓶に詰め替えてほかのワインと同じ場所に保管していたことがわかりました。
本事例は、消費者の一方的な思い込みが原因でした。ただし、その背景には、商品異常について販売店あるいはメーカーに相談しにくいという意識があったようです。コロナ禍では、オンラインによる食料品の購入需要が増えています。食品取扱者と消費者のお互いの顔が見えない状態で商品取引が成立する状況においては、消費者の心理や行動を十分に理解し、より信頼度を高めるための取組みの実施が求められます。
※ 商品を熱収縮性プラスチックフィルムで覆い、加熱収縮することにより、フィルムを商品の形状に収縮して密着させる包装技術。包装部分への汚れを防ぎ、いたずら防止対策にも効果がある
公益社団法人 日本食品衛生協会 技術参与・一般社団法人 関東学校給食サービス協会 顧問谷口力夫
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