- 日替わりコラム
Thu
10/7
2021
このたび福岡市に、認知症の人だけが登録できる日本初の人材バンク「オレンジ人材バンク」が設立されました。商品を開発したい企業が認知症の人の声を聞いたり、働く場が提供されたりする仕組みです。
「そもそも認知症の人は働けるの?」と思われるかもしれませんが、軽度の認知症の人は簡単な作業なら問題なくできます。その人のできることを活かすのが、今の介護の考え方でもあります。時間や日数は限定的になっても、できることを活かせる仕事は少なくないように思います。
福岡市内に住み、10年前に認知症と診断されたAさん(73歳)は、オレンジ人材バンクで紹介された書店で月に1回、2時間だけ働いています。本の整理や本にフィルムを貼る仕事などをしています。記憶障害の一種でもある認知症ですが、Aさんは言われたことを忘れないよう、その都度メモに書き留めるようにしているそうです。また、店側も次の仕事を頼むときは前の作業が一段落してからと、Aさんに配慮しています。
Aさんは、「仕事の話をいただいた時の驚きと嬉しさは言葉では言い表せません。生きる張りもありますし、毎月、この日を待ちわびています」と話します。この取組みは、「認知症の人は働けない」という多くの人の固定観念を打ち砕いてくれる画期的な出来事だといえるでしょう。
介護問題研究家中村和彦
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス