- 日替わりコラム
Fri
10/8
2021
日本の秋は人の暮らしに快適な季節です。実りの秋、食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋、美術の秋、ほかにもたくさんある「〇〇の秋」は、心身ともに楽しみの多い豊かな季節であることを物語るものでしょう。
全国各地の美術館・博物館では、毎年、文化・芸術の秋にふさわしい魅力的な展覧会が開催されています。澄んだ空のもと涼やかな風に触れつつ公園や館の庭の色づく樹々を通り抜け、館内では選りすぐりの作品や資料の美や技や知に感動し堪能する、こころ豊かな秋のひとときです。
秋には多くの社寺で曝涼(ばくりょう)が行われ、日頃は宝庫で保管されている宝物が公開されます。曝涼は虫干しともいわれ、宝物の湿気や虫カビなどを払い、人の目と手で点検します。高温多湿な夏を過ぎて到来する冷涼な秋の気候を活用して行われることが多いのです。秋は宝物にも快適な季節といえましょう。奈良の秋の風物詩として知られる「正倉院展」は、毎年10月に始まる正倉院宝物の曝涼にあわせて、奈良国立博物館で開催される展覧会。多くの人々が歴史に思いを馳せる秋のひとときです。
コロナ禍の今、人のこころに果たす文化・芸術の役割が再認識されています。高く青い空から届く透き通った日差しに心地よい風の10月、密を避けつつ道中の風景や自然の移ろいを楽しみながらお近くの美術館・博物館や社寺で、こころの栄養補給の秋の日を過ごしませんか。
放送大学 客員教授・九州国立博物館 名誉館員・一般財団法人 環境文化創造研究所 顧問本田光子
全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上での例外を除き、禁じられています
- アクセス