- 日替わりコラム
Wed
12/8
2021
カビ毒DON(デオキシニバレノール)は主に麦の中で植物寄生菌により生成されますが、この菌はDONの類縁物質も作ります。たとえば、アセチル化DONやDONにグルコースが結合したDONグルコシドです。これらが麦に占める量はDONのおよそ10%といわれていますが、リスク評価時に問題となるのは類縁物質にも毒性があるのか、DONと比べて毒性の強さはどの程度か、ということです。
実は、2010年のJECFA※ ではこの問題に取り組んでいました。アセチル化DONについては、腸から吸収される際にDONに変換されると考えられたため、アセチル化DONとDONの合算量で耐容1日摂取量を設定しました。一方のDONグルコシドについては、当時その毒性に対する論文が少なく、評価されませんでした。その後、DONグルコシドの腸管からの吸収や毒性についての研究も進み、2018年に出された食品安全委員会のDONのリスク評価書によると、アセチル化DONもDONグルコシドも体内に吸収されるときにDONになると考えられています。
近年、農作物の中で毒性が隠れた状態で存在するカビ毒は、DONだけではないことがわかってきました。このようなカビ毒をマスクドマイコトキシンと呼び、研究者の間で新しいカビ毒として注目されています。
※ 食品に対するリスク評価などを行う国際的な専門家会議
元国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部 部長・一般財団法人 環境文化創造研究所 顧問小西良子
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