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Tue
12/14
2021
カマキリといえば、交尾時に雄が雌に食べられるという、痛ましいエピソードが有名です。雄は頭を食べられると、脳にある交尾抑制作用が解除されるのだという説まであるようです。しかし、この性的共食いが本当ならば、雄とはなんと情けない存在なのでしょう。
カマキリ博士の安藤喜一※ さんによると、雌雄をペアにして観察すると、次の4通りの結果が得られるそうです。
(1)正常に交尾して、共食いなしでわかれる。
(2)雌が雄の頭を食べて、その頭のない雄と交尾する。
(3)交尾した後に、雌が雄を食べる。
(4)交尾せずに、雌が雄を食べる。
85頭のオオカマキリの雌で観察した結果によると、雄が雌に食べられる割合は10%以下に過ぎないそうです。カマキリの雌成虫は、性成熟してから交尾の準備ができるまでに2週間ほどかかります。それより前に雄を近づけると、交尾相手としてではなく、餌として認識して食べてしまうのです。
雄が食べられるもうひとつの原因は、カマキリの捕獲本能にあるようです。目の前で動くものを、自慢の鎌(前脚)で即座に捕らえる習性があり、交尾後に雌の近くで不用意に動き回れば、雄は獲物として捕獲されてしまうのです。性的共食いはほかのカマキリでも見られ、雌と比べて雄の体が小さく捕獲しやすい種ほど、その頻度は高くなるようです。
※ 『カマキリに学ぶ』安藤喜一著 北隆館(2021)
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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