- 日替わりコラム
Tue
3/15
2022
日本におけるDON(デオキシニバレノール)の基準値(暫定)が決まったのは2002年5月のことで、これはJECFA※1 がDONのリスク評価を行った翌年という非常に早い対応でした。
一方、食品の国際規格であるコーデックスではなかなか決まらず、JECFAが2010年に再度リスク評価を行った結果を受けて2015年に「加工向けの穀類(小麦、大麦、トウモロコシ)」(2mg/kg)、「小麦、大麦、トウモロコシを原料とするフラワー、ミール、セモリナ及びフレーク」(1mg/kg)、「乳幼児用穀類加工品」(0.2mg/kg)に細分化した基準値が設定されました。では、なぜ難航したのでしょうか。
コーデックス規格は、コーデックス委員会で決定されます。この委員会は188か国およびEU※2 で構成されており、各国政府の代表が参加します。そのため、生産国と消費国の利害関係がぶつかり合い、基準値合戦が繰り広げられるのです。会議中はもちろんのこと、休憩中のロビー活動も激しく行われるようです。私は国立衛生研在任中にJECFAとコーデックス両方の会議に参加したことがありますが、科学者の代表が集うJECFAでは、そのような駆け引きはほとんどありませんでした。日本では今回、コーデックス規格を基にDONの正式な基準値を決定しましたが、幼児用への規制がないのが少し残念です。
※1 食品に対するリスク評価などを行う国際的な専門家会議
※2 2018年5月現在
公益社団法人 日本食品衛生学会 会長・一般財団法人 環境文化創造研究所 顧問小西良子
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