- 日替わりコラム
Fri
5/13
2022
私たち人間は、毎日、仕事や勉強、人とのふれ合いの中で、さまざまな経験を積んでおります。いつの時代も、生きることそのものが大変であるために、「生きることの喜び」よりも、「生きなければならない苦しみ」のほうが勝(まさ)ってしまう瞬間もあろうかと思います。そして、生きることに忙しくなってしまいますと、いつの間にか、「生かされている」という「命の本質」をも忘れてしまうものです。
人は、恵まれ過ぎている時に「感謝の心」を忘れ、苦しみに苛(さいな)まれている時に「慈悲の心」を持てなくなってしまいます。感謝や慈悲の心が失われてしまった時、人はもっとも辛(つら)いのかもしれません。
「私たちは、何のために生きるのか?」これは、人生最大の命題だと思いますが、大切なことは、「どのように生きるのか」という「生き方」のほうにこそあるのではないでしょうか。「生きるために仕事をする」のと、「仕事をするために生きる」のとでは、同じ「生きる」にしても、まったく違った「生き方」になるのだと思います。
そして、「私が命を生きている」のと、「命が私を生きてくれている」のとでは、同じ「命」でも、まったく違った「命」に見えて参ります。
「生きる」ということは、「自他の命と向き合う」ということであり、「魂を見つめる」という『いのちの命題』なのだと思うのです。
合掌
下野薬師寺別院 舎那殿壇 龍興寺 副住職阿波建多
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