- 日替わりコラム
Mon
7/4
2022
ある飲食店で、煮物による黄色ブドウ球菌食中毒が発生しました。十分に加熱調理された煮物は専用のステンレス容器に移され、常温で数時間保管されましたが、この間に黄色ブドウ球菌が増殖して毒素を産生してしまいました。
黄色ブドウ球菌は、作業者の手指からは検出されませんでしたが、洗浄済みのステンレス容器やレードルなどから検出されました。
調理器具類は、毎日、食器洗浄機で洗浄されていましたが、ステンレス容器表面や縁の部分には黄色ブドウ球菌が「バイオフィルム※ 」状態で存在していて、煮物が容器に保管された際に増殖したと考えられました。
この飲食店では、食器洗浄機にかける前の容器類の食品残渣除去が不十分で、すすぎ用温水の設定温度も低かったために洗浄後も汚れが落ち切れていない状態が継続していました。さらに、人の手指や食材由来の黄色ブドウ球菌が、食品残渣とともに調理器具や容器表面にバイオフィルムを形成したことが推察されました。
調理器具類の洗浄・消毒は、食品取扱い現場では毎日繰り返されますが、安全な食品を提供するためには欠かすことのできない重要な作業でもあります。漫然と作業を繰り返していると思わぬ落とし穴がありますので、時には洗浄方法や効果を確認し直すことが必要です。
※ 容器表面などに付着して形成されるフィルム状の微生物共同体で、食品残渣(菌体外多糖)などに覆われていて、高い耐性を示す。特に黄色ブドウ球菌は、強固なバイオフィルムを形成することが知られている
公益社団法人 日本食品衛生協会 技術参与・一般社団法人 関東学校給食サービス協会 顧問谷口力夫
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