- 日替わりコラム
Wed
11/9
2022
アリとシロアリは、分業で集団生活を営む社会性昆虫です。
アリは仲間との交信に主にフェロモンなどの化学物質を使いますが、シロアリは頭や体を周りに叩き付けて振動を発し、交信します。シロアリは捕食者のアリから身を守るために、アリの足音を盗聴して、彼らを避けているという結果が報告されました※ 。シロアリはアリが近くにいると、シロアリだけの場合と比べて丸太の摂食量を減らします。死んでしまったアリでは、そのような効果がなかったので、アリの匂い(化学物質)は重要ではないようです。
次に、アリの足音を特殊な装置で録音して再生したところ、生きたアリを入れた場合と同様の効果がみられました。つまり、シロアリはアリの足音を感知して、自分たちの存在を気づかれないようにするために摂食活動を控えていたのです。
シロアリには兵隊シロアリがいますが、危険に遭遇すると警戒振動を発します。この振動はアリの足音の周波数に近いことがわかり、アリの足音をまねた振動が警戒振動として進化した可能性が示唆されています。
シロアリの中には、ほかのシロアリの巣に忍び込んで食物などの資源を盗む種がいます。そんな行動をとるシロアリの足音はとりわけ小さく、「抜き足差し足忍び足」で盗みを成功させているのかもしれません。
※ Oberst S et al.(2017)Ecol. Lett. 20:212―221.
元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二
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