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12/2

2022

生物多様性の「もうひとつの役割」

 日本が誇る国際賞のひとつに「コスモス国際賞」があり、今年度の受賞者に選ばれたのは米国バード大学のフェリシア・キーシング博士でした。彼女は、「生物多様性の高い生態系はさまざまな病原体の温床となりうるが、総体としては感染症のリスクを下げうる”希釈効果“が存在する」ことを明らかにしました。
 では、”希釈効果“とは何でしょうか。それは、「ある病原体に感染しない種がたくさん生息すると、その病原体の生態系内での増殖と拡散が阻害され、密度が低位に保たれる、すなわち希釈される」ということです。自然生態系に人が侵入すると一般的に大型哺乳類が減少するため、げっ歯類などの小型哺乳類の生息密度が上昇します。これらの多くは人と動物の共通感染症の宿主であることが多く、結果として人への感染率が高まるのです。
 生態系を健全に保つために生物多様性保全が不可欠であることはこれまでの多くの研究によって明らかにされてきましたが、「自然と人間との共生」が人の感染症の蔓延防止にとっても重要であるというキーシング博士の研究成果は、新たな視点をもたらすものです。この数年間、コロナ禍の蔓延に苦しんできた世界の人々が、生物多様性の重要性を再認識する良い機会になると思います。

一般財団法人 環境文化創造研究所 名誉所長林良博

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