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2023

天敵がいると翅を持った子孫を産むアブラムシ

 アブラムシは植物に寄生し、どんどん増えます。
 一般的にアブラムシは成虫になっても翅を持たず、翅や飛翔するための筋肉を作る必要がありません。また、雄と交尾することなく繁殖可能な単為生殖なので、すべてのエネルギーを繁殖にあてることができ、とても効率がよいのです。
 一方、体は柔らかく無防備なため、多くの捕食性天敵のかっこうの餌食になっています。アブラムシは、テントウムシやクサカゲロウなどの天敵に襲われると、警戒フェロモンを出して仲間に危険を知らせます。すると、歩いて逃げたり植物から落下するなどして難を逃れることが知られていました。エンドウヒゲナガアブラムシは天敵であるクサカゲロウに出合うとファルネセンという警戒フェロモンを出しますが、この物質を触角で感知した仲間のアブラムシは、自身が逃避行動をとるだけではなく、翅を持った成虫に育つ子孫を産み始めることが発見されました※ 。つまり、フェロモンに反応した母親は、飛翔力のある有翅型の子孫を産むことにより、天敵が多い生息地から子孫を逃がしているのです。
 実は、ジャガイモなどの植物もそのフェロモンと同じ物質を持っていて、それを嫌うアブラムシの飛来を抑える一方で、それに引きつけられる、アブラムシの天敵の数を増やしていることもわかってきました。

※ Kunert G. et al.(2005)Ecol. Lett. 8: 596―603.

元農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所 研究室長田中誠二

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