- 日替わりコラム
Fri
2/3
2023
2月3日は節分ですが、海の中にも鬼の名前がついた生きものがいます。そのひとつは環形動物門多毛綱(たもうこう)のオニイソメで、ゴカイの仲間です。ゴカイというとハゼ釣りの時に釣り針に刺す小さな生きものを思い浮かべますが、オニイソメは形こそゴカイに似ているものの、長さは1m、太さ2.5cmにもなり、強力なあごを持っています。ゴカイを触るのを嫌がる女性を笑う男性でも、恐ろしくて触れないような生きものです。
このオニイソメ、世界中の暖かい海の砂地に生息しますが、数は少ないようでまれにしか見られません。普段は砂に縦に穴を掘って入り、頭を出して周囲をうかがっています。そして、魚が通り過ぎると下から襲いかかり、大きなあごで食いつきます。その力は、小さな魚なら真っ二つにしてしまうほど強力です。顔は獰猛(どうもう)で、別名をつけるとしたら「海のならず者」といったところでしょうか。魚の餌にするゴカイとは、まさに真逆の存在です。
もし魚を突いて獲るヤスを持っている時に出会ったら、オニイソメを突きたくなるかもしれません。しかしその穴の中で産卵を控えた雌が、獲って貰った魚を食べている姿を見たら、きっと思い込みを恥じるでしょう。多様な生きものからなるこの世界ですから、さまざまな生きものたちが自由に暮らしてもらいたいものです。
古田優
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